鮎正宗酒造/妙高市
「特別本醸造 鮎正宗」を手にする飯吉富彦常務

 「うちの酒の味は水の味です」。

 新潟県と長野県を結ぶ国道292号沿いの山間にある鮎正宗酒造。蔵の裏に川が流れる広大な敷地には、清冽(せいれつ)な伏流水が1時間に約6トン湧き出ている。地酒・鮎正宗の命の水だ。代々守り継がれてきた大切な水を後世に残すため、井戸からのくみ上げはしていない。「自然に湧き出る水だけを使い、井戸をいじめないよう心がけています」。5代目当主・飯吉守社長の弟である飯吉富彦常務は説明する。水を大量に使用する工程では、タンクにためた水を使用。さらに全排水を社内で浄化してから川へ戻している。裏庭にはこの水を利用した池があり、鯉が気持ちよさそうに泳ぐ。

 水の特性を生かし、「甘さは旨さ」を基本とする、理屈抜きに「おいしい」酒を目指す。今回の1本「純米原酒 鮎正宗 壱度火入れ」は甘さとフルーティーな香りを感じつつ、生原酒を瓶に詰めてから火入れ(殺菌)することによるきれいな後味が特徴。仕込みタンクごとに商品化しているので、タンクの個性も楽しめる。

 伝統を守りつつ、時代に合わせた、きめ細やかなニーズに応える日本酒にも力を入れる。5年の開発期間を経て昨年デビューしたスパークリング日本酒「スウィート フィッシュ」や、桃色の純米にごり酒「さくらいろ」は女性や日本酒ビギナーに人気だ。

 新商品のデザインは6代目蔵元の飯吉由美さんのアイデアによるところが大きい。東京農大醸造学科で学び、蔵に入って5年目。蔵人として造りに参加しながら商品開発や販促も手がけ、将来的には「手売りしたい」と、飲み手の顔が見える酒造りを目指す。自然に寄り添い、恵みの水に感謝しながら、笑顔を運ぶ酒を追求し続ける。【高橋真理子】

[2017年4月15日付 日刊スポーツ新潟版掲載]