千代の光酒造/妙高市
「妥協せず、改善を重ねて求める味を形にしていきたいですね」と話す池田剣一郎常務

 「最初は消費者として、酒が好きになっていきました」。千代の光酒造の池田剣一郎常務は大学卒業後、東京でのサラリーマン経験を経て、8代目を継ぐために12年、実家に戻った。学生時代はアルコールを飲む習慣はなく、実家から米とともに送られてくる酒も減らなかった。社会人になり飲む機会が増え、「日本酒にも味がいろいろあるのを知り、興味が出てきました」と振り返る。27歳で転職を考えたとき、初めて酒造りをしてみたいと思い、実家へ戻ることを決めた。

 蔵の現場に入り、経験を積みながら酒類総合研究所のセミナーなどで学び、3年目の14年にタンク1本を任された。米のうまみを感じる、飲み飽きしない晩酌酒という蔵の定番とは違う、新しい味わいに挑戦。そして、「純米吟醸KENICHIRO」が誕生した。

 15年の「越後謙信SAKEまつり」でデビュー後、毎年チャレンジを重ね、「Kシリーズ」として展開。今回の1本は今春発売したシリーズ最新商品「純米吟醸KENICHIRO 壱度火入れ」だ。酒米を五百万石から越淡麗に替え、味のふくらみを求めた。甘みと酸味が分かりやすく、後味が爽やかで、初心者も楽しめる。

 豪雪地として知られる妙高市に1860年(万延元)に創業した。仕込み水は裏山の大毛無山の伏流水。原料米にもこだわり、蔵の田んぼで杜氏や蔵人が酒米を栽培。池田哲郎社長は県酒造組合の原料米対策委員長でもある。特別本醸造「千代の光 真(しん)」は、蔵の味を象徴する定番酒として親しまれている。

 「やればやるほど改善点がでてきます」という池田常務は、「『K』を『真』に並ぶくらいの柱にしたい」と意気込む。自身の原点である消費者意識を大切に、これからも挑戦し続ける。【高橋真理子】

[2017年7月15日付 日刊スポーツ新潟版掲載]