「はでっぱの香」/阿賀町
はさ掛けが終わった稲の前で記念撮影する参加者

 9月12日。水害が心配された数日前の天気とは打って変わり、汗ばむほどの秋晴れの日。福島県境に位置する東蒲原郡阿賀町の田んぼに集った50人ほどの人。子供たちの姿もある。「たかね錦」の立て看板があるこの田で、これから「はでっぱの香」という酒に使われる酒米の稲刈りが行われる。

 「酒屋だって、待っているだけじゃダメ」。14年前、阿賀町の地酒専門店11軒が、2つの酒蔵がある阿賀町にしかない、ここでしか飲めない酒造りを始めた。田植えから稲刈りまで関わり、自ら汗を流して世に出す酒だ。製造は「麒麟山」の蔵元である麒麟山酒造に依頼。「地域おこしにつながる」と蔵元は快諾した。最初は酒販店主のみ、数人で田植えから始めた。

 「はでっぱ」は、稲を天日干しするときに掛ける「はさ木」のある場所「はで場」から命名。飲む方たちにも田植えや稲刈りを体験してもらおうと声がけを続けるうち徐々に人数が増え、現在では県外から毎年楽しみに来る人も多い。

 酒の認知度を上げるため、新潟市や県外のイベントにも積極的に参加。この日、新潟市から参加した大学生は「稲刈りは初めて。古町のイベントで知り興味を持ちました」と清々しい笑顔で答えた。刈り取った稲がはさ木に掛けられ、約2時間で作業は終了。このあと麒麟山酒造の蔵で収穫祭。これもまた、参加者の楽しみなのだ。

 現在8軒の酒屋がこの取り組みに参加し、店主たちは年明けには仕込み作業にも関わる。手塩をかけて育てる独自の地酒。この存在を地元の人や温泉客にも知ってもらおうと、3年前から春と秋に「はでっぱまつり」を開催している。今秋は10月10日から11月30日まで、阿賀町の旅館や飲食店で「はでっぱの香」を楽しめる。しっとりとした紅葉を愛で、いい湯に漬かり、ここだけの酒を堪能したい。【高橋真理子】

[2015年9月25日付 日刊スポーツ新潟版掲載]