原酒造/柏崎市
「地元の乾杯酒といえば、この酒です」と遠山マネジャー

 「郷里の『越の誉』で乾杯です」。1972年(昭47)。当時の田中角栄首相が日中国交正常化を実現し、パーティーの様子がテレビ放送されたときのアナウンスだ。〝田中角栄が選んだ地酒〟、それが今回の一本「越の誉 純米大吟醸 秘蔵酒 もろはく」。こうじ米、掛米ともに45%まで磨いて醸した純米大吟醸酒を、蔵のタンク内で8年間常温熟成させたもの。営業部の遠山秀一マネジャーがこの酒の誕生秘話を語る。

 「戦後、酒造米も配給制だった時代から、昭和40年ころになり自由に米を使えるようになった時、『これからは純米酒の時代が来る』と先代の社長は考え、常温でいかに純米酒が日持ちするかを調べるためにタンク1本分で試験をしたのが始まりです」。

 精米歩合を変えてテストしたところ、こうじ米も掛米も、よく磨いた米を使った酒は常温保存しても日持ちするどころか、日本酒の概念を超えるおいしさをもたらすことがわかった。

 この酒が誕生した当初、酒米は兵庫県産の山田錦を使っていたが、「米、技、水、オール新潟、オール柏崎」の酒造りへの取り組みを続ける中で、昨年11月に瓶詰めしたものから原料米はすべて地元産「越神楽(こしかぐら)」となった。 「越神楽」は原酒造と中央農業総合研究センターとの共同開発で12年の歳月をかけて誕生した新品種。2007年(平19)に発生した中越沖地震で蔵の大半が全壊し、翌年、そこからの復興の第1歩となる「和醸蔵」竣工(しゅんこう)と時を同じくして世に出た酒米でもある。

 母は山田錦、父は北陸174号。大吟醸酒などの高級酒の醸造に適した酒米で、味にふくらみがあり、さらりと心地よいのどごしが特徴だ。09年には「和醸蔵」でこの米を使って初めて醸した大吟醸が全国の金賞、関東信越国税局の鑑評会で入賞を果たした。

 地元での契約栽培にこだわり、顔の見える酒造りを大切にする原酒造を象徴する酒がもうひとつある。柏崎市内30店の酒屋だけが販売する「銀の翼」だ。造り手と飲み手をつなぐ地元の酒屋とともに、いい酒を多くの人に手渡していきたいという思いを形にした。

 特別な日も、日々の食事にも寄り添う「幸せを呼ぶ酒、愛しみの酒」を追い求める。【高橋真理子】

[2016年2月27日付 日刊スポーツ新潟版掲載]