長谷川酒造/長岡市
「さわやかな香りとともに、飲んだあとの充実感も楽しんでください」(長谷川葉子さん)

 「信州屋」の屋号が物語るように、長谷川酒造のルーツは信州だ。戦国時代に越後・摂田屋(せったや)へ移住。江戸時代には天領だった摂田屋の地で、お神酒造りを許された5軒のうちの1軒で、初代重吉はお神酒の残酒を販売することを懇願し許され、1842年(天保13)に創業。このことは蔵から発見された当時の「願上書」に記されている。

 新潟県生まれの酒米、五百万石と越淡麗のほかに、長野県産の美山錦(みやまにしき)も使用。「15年前に、ルーツの地である信州産の美山錦を使おうと、栽培をお願いしました。うちの蔵の特性に合っている酒米だと思います」と長谷川葉子専務。美山錦は代表銘柄の「越後雪紅梅(えちごせっこうばい)」純米大吟醸酒原酒に使われ、ふくよかな香りと深い味わいのバランスが絶妙。「一番好きなお酒です」と長谷川専務はほほ笑む。しかしながら今回の1本はこちらではない。今年初めて商品化された、春から初夏限定の「越後雪紅梅 春純吟 生貯蔵酒」。地元長岡の宝徳稲荷のふもとの田で栽培された越淡麗を使った純米吟醸酒。蔵の信条である地元の水、地元の米、そして手作りを生かしたニューフェースだ。

 長谷川専務は現在製造責任者を兼任し、酒造りの現場にも入る。次期杜氏を目指す若き蔵人とともに、小千谷出身で富山県の銀盤酒造杜氏を長年務め、黄綬褒章も受章した名杜氏、沢中忠司さんの指導のもと、和釜で米をふかし、小ダンクで仕込む昔ながらの手造りで蔵の味を醸し続けている。2014年度に在籍した、やはり黄綬褒章を受章した野積出身の名杜氏、故高橋孝一さんからの教えも蔵の宝だ。長谷川専務が忘れられない高橋杜氏からの言葉が「作業は省くな」。現在でも造り蔵には高橋杜氏手書きの作業メモが貼られている。蔵が歩んできた歴史を大切に、小さな蔵のよさを生かした美酒を追求していく。【高橋真理子】

[2017年5月20日付 日刊スポーツ新潟版掲載]