北雪酒造/佐渡市
羽豆専務(左)は渡辺杜氏の酒造りに絶大なる信頼を置いている

 長岡市の寺泊港から佐渡の赤泊港までは高速船で約1時間。中世から続く港町、赤泊で北雪酒造は145年間、地酒を醸し続けている。酒の貯蔵段階で佐渡の波の音や音楽を流したり、超音波振動を与えるなど、ユニークな試みに挑戦する蔵としても知られる。

 ここ数年、酒好きの間でよく話題にのぼる「遠心分離の酒」にも13年から取り組んでいる。酒を搾る工程で、機械で圧をかけたり、袋に入れるのではなく遠心分離機にもろみを入れて清酒を抽出する。分速2500回転、約40分で清酒と酒粕を分離する。ストレスがいっさいかからず、密閉環境なので酸化もしないため、本来の旨みや香りがそのまま残る。

 今回の1本は、北雪酒造の看板商品である、山田錦を35%まで磨いた大吟醸酒「YK35」の搾りを、この遠心分離機で行った「北雪 大吟醸 YK35『信』遠心分離」だ。

 「信」は世界的に知られる日本食レストラン「NOBU」のオーナーである松久信幸さんの名前から取った。同店では約20年前から、日本酒は北雪のみを扱い、ファンにはロバート・デ・ニーロらセレブも多い。

 「海外ではNOBU=北雪の認識をいただいているので、料理に負けないよう、常に酒質を高めていくためにさまざまな挑戦をしています」と羽豆大(ひろし)専務。約20年、ここで杜氏を務める渡辺寛治さんは「文化も違う国の人たちが、自分たちの酒をどんな思いで飲んでいるのか。想像しながら、蔵人とともにいい酒造りに励んでいます」と造り手の思いを語る。

 羽豆専務は「ベースの酒の良さがあるからこそ、時代に合わせたチャレンジができます」と断言する。攻め続けることは、酒造りのロマンを追いかけることでもある。地元で愛される酒の自負が、そのエネルギーとなる。【高橋真理子】

[2017年6月10日付 日刊スポーツ新潟版掲載]