猪又酒造/糸魚川市
5代目の猪又知良さん。修行を終え3年前に蔵に戻った。椎名林檎ファン

 「サビ猫ロック」。この不思議なネーミングの地酒が今回の1本だ。

 糸魚川市の奥座敷、新町に明治時代に創業した猪又酒造は火打山などの名峰に抱かれた早川谷にある。雪解け水に恵まれ、代表銘柄「月不見(つきみず)の池」から湧出する天然水が仕込み水だ。猪又酒造の原料米は普通酒からすべて蔵人栽培の酒造好適米だ。

 「先代は高品質できれいな酒を追い求めていました。普通酒から良質なものをと、原料や精米、造りにこだわってきました」と4代目の猪又哲郎社長。きれいな酒を基本に、猪又社長は米本来のうま味を表現するため熟成にこだわる。約40年、蔵元の思いを形にしてきたのが上越市吉川区出身の佐藤良一杜氏だ。

 杜氏の熟練の技による「ザ・日本酒」を世に出してきた蔵元が、満を持して昨年発売したのが「サビ猫ロック」。「日本酒に興味がない人が、猫や音楽をきっかけにうちの酒と出合ってもらえたら」と5代目の猪又知良(ちから)専務は目を輝かせる。

 たかね錦の精米歩合60%の「赤サビ」と、五百万石の精米歩合55%の「黒サビ」がある。ともにビン火入れの温度を通常より低い53度にし、生酒のフレッシュさを残しつつ、火入れした酒ならではの軽やかさを味わえる。酒米、精米歩合の違いを利き酒できるのも魅力だ。

 ネーミングは、蔵の愛猫であるサビ猫(赤と茶の毛色の猫)「あんこ」と、家族全員が音楽好きであることにちなむ。ラベルは「あんこ」の写真をベースに猪又社長が制作。裏ラベルの猫のイラストは知良専務作。2月、6月、9月と3回発売予定で、2月はライブハウス、6月はホール、9月はアリーナと、〝サビ猫のライブ〟の成長を追うごとく、新酒から熟成していく味の進化を追いかけられる仕組みに。日本酒の新たな楽しみ方の提案でもある。【高橋真理子】

[2017年4月1日付 日刊スポーツ新潟版掲載]