下越酒造/阿賀町
先代と2代続けて鑑定官を務めた佐藤俊一社長(左)と猪悦夫杜氏

 「日本酒百年貯蔵プロジェクト」という取り組みがある。1985年に設立された長期熟成酒研究会が2005年に始めた、日本酒を100年間貯蔵するという前代未聞の取り組みだ。10年ごとに利き酒、分析を行っている。

 長期熟成酒研究会に県内の蔵元として唯一加盟し、百年貯蔵プロジェクトにも参加しているのが阿賀町の下越酒造だ(他にも菊水酒造も酒の貯蔵のみに参加)。4代目社長の佐藤俊一さんは1993年に蔵を継ぐまで国税庁の酒類鑑定官を務めた、いわば酒のスペシャリスト。佐藤社長は蔵の1本の柱として熟成古酒の取り組みを据える。

 今回の1本「麒麟 秘蔵酒」は蔵を代表する熟成古酒の最高峰。山田錦を40%まで磨き鑑評会仕様で醸した「麒麟 大吟醸」を0度で5年以上貯蔵した淡熟型の古酒だ。大吟醸の華やかさとともに「飲んだあとにふわ~っと戻ってくる古酒ならではの余韻が楽しめます」と佐藤社長。

 下越酒造には大きく3本の柱がある。伝統ある淡麗辛口の「麒麟」「ほまれ麒麟」、袋搾りならではの深い旨味と上品な甘みを楽しめる〝ひと口目からおいしい〟「蒲原」シリーズ、そして熟成古酒。熟成古酒は製造・熟成方法によって淡熟、濃熟、中間に分けられ、2000年から2016年ものまでそろう濃熟型の「麒麟 時醸酒」は消費者が家庭で熟成による味の変化を楽しめる古酒でもある。長期熟成を目的に、通常とは全く違った設計で造ったものを常温で貯蔵。色、香り、味わいすべてが深みを増す。製造責任者となって2季目を迎える猪(いの)悦夫杜氏は蔵のそれぞれの柱の特長を「今までの歴史を踏まえ、しっかりと消費者に届けていきたい」と意気込む。熟成古酒の取り組みは、新潟清酒の新たな可能性を探る挑戦でもある。【高橋真理子】

[2017年1月7日付 日刊スポーツ新潟版掲載]