河忠酒造/長岡市
野水万寿生杜氏は新潟清酒学校20期生だ

 「酒造りは超楽しいです」と河忠酒造の野水万寿生杜氏は目を輝かせる。新潟酒造界でその名を知らぬ人はないほどの名杜氏、郷良夫さんに師事し、2010年(平22)に33歳で杜氏に就任。言葉ではなくその背中で酒造りの厳しさを学んだ。

 「うちの蔵の酒は、郷杜氏の時代から淡麗旨口。味が乗ったタイプです」と説明する9代目当主の河内忠之社長が今回選んだ1本は、意外にも辛口の酒。〝とうがらしラベル〟の愛称で親しまれている「想天坊 大辛口」だ。日本酒度はプラス10。スッキリとした切れのある味わいの中にもきれいなうまみを感じる普通酒だ。

 昨今、うまみや甘みを前面に出した酒が注目される中で、新潟の淡麗辛口をベースとした辛口の酒をあえて選んだのは、「新潟で酒を造らせてもらっているのですから、個性も大切ですが、いますべきは『新潟らしさ』をわかりやすく伝えること。それができるのが食事と一緒に楽しめる辛口の酒です」と河内社長。

 辛口への挑戦は野水杜氏の挑戦でもある。杜氏になった年に新たに辛口の純米酒造りに取り組んだ。1年目は失敗。課題を同世代の蔵人たちと検証し、出品酒並みに手をかけ、2年目に「想天坊 外伝 辛口純米酒」が誕生した。蔵の従来の「淡麗旨口」とは違う味わいであることを「外伝」の名で表現した。

 野水杜氏がいま酒造りが楽しいと感じる大きな理由は、酒造りに関して聞きたいことが聞ける仲間がいることだ。蔵人たち、そして外では新潟清酒学校の同期や先輩、後輩。「飲み会でも酒の話ばかりです」。挑戦への欲望も楽しい理由の1つだ。辛口を極めつつ、甘口のスッキリとした酒も造ることを意識している。どんな時代が来ようと、飲んでおいしい、その楽しさを伝える新潟の酒を目指す。【高橋真理子】

[2016年7月30日付 日刊スポーツ新潟版掲載]