君の井酒造/妙高市
田中専務(右)と早津杜氏

 今月5日、昨季(平成26酒造年度)仕込んだ清酒を評価する関東信越国税局酒類鑑評会(以下、局)の結果が発表された。今年で86回の歴史を持ち、春の全国新酒鑑評会(以下、全国)と並ぶ日本酒の2大品評会だ。

 君の井酒造では今春全国で金賞を受賞し、今回の局の「吟醸酒の部」でも優秀賞を受賞。昨年の局では首席に当たる最優秀賞にも輝いている。

 蔵の技術と思いを結集した、いわばF1レースともいえる出品酒について、今年で杜氏(とうじ)14年目となる早津宏杜氏は「常に悩んでいます」と困惑の表情を浮かべる。トップを取った酒蔵が次の年には入賞すらしないということもよくあるという。造り手にとっては毎年が挑戦なのだ。

 とはいえ「ほっとしました」とほほ笑む早津杜氏。厳寒早朝の冷水での米の手とぎから始まり、24時間体制の麹(こうじ)作り、仕込み、搾りまで、出品酒に仕上げるまでには蔵人たちの計り知れない労がある。それに応えられたことへの安堵(あんど)の笑みだ。今回の君の井酒造の「1本」は、この受賞酒「君の井 大吟醸」。最高級の酒米「山田錦」を35%まで磨き、大吟醸酒の王道といえるフルーティーな香りとやわらかな口当たりの最高級酒だ。

 君の井酒造の酒には3本の柱がある。「地元で日常の晩酌酒として楽しんでいただける普通酒や本醸造酒、古来の製法である山廃仕込みを継承した個性的な酒、そして出品酒です」と田中智弘専務は説明する。「出品酒は賞を取ることだけでなく、造る過程において技術を磨き継承していくことに意味があります。その技術はほかの柱にもフィードバックされます」。

 早津杜氏は流行や賞の方向性などを超えた、バランスの取れたおいしさを目指している。さらに嗜好(しこう)品である酒だからこそ、もっと柔軟に楽しんでほしいと願う。「大吟醸をぬるかんでも味わってほしいですね。おかんにするなんてもったいないとよくいいますが、逆に、ぬるかんで味わってみないなんてもったいないですよ」。ぜひ試してみたい。【高橋真理子】

[2015年11月14日付 日刊スポーツ新潟版掲載]