武蔵野酒造/上越市
「酒造りは温故知新。常に挑戦しつづけたいですね」と小林元社長

 「スキー正宗」。武蔵野酒造にこの銘柄が誕生したのは昭和の初め。4代目である小林元社長の先々代が、上越市は「スキー発祥の地」であることから命名した。ユニークな銘柄だ。その後、上杉謙信の居城が上越の春日山にあったことから「春日山天と地」(誕生時は「春日山」)の銘柄が生まれ、現在この2つが蔵の顔となっている。

 今回の1本は「スキー正宗 入魂」。地元産五百万石を使った特別本醸造酒だ。最も大きな特徴は地元志向。原料だけでなく販売も、顔が見える地元酒販店に限定。現在上越市内13店舗で扱う。味わいも、地元の人が日々楽しむ高品質な晩酌酒をコンセプトに、味があって後味すっきり、どんな料理にも合う飲み飽きしない酒だ。「スキー正宗」は日常楽しむリーズナブルな酒が中心だが、「春日山天と地」にはそれに加えて純米吟醸や大吟醸酒もそろう。酒米は新潟県が開発し2007年にデビューした「越淡麗」。試験栽培段階から地元で越淡麗を栽培してきた経緯もあり、この酒米への思いは強い。

 米とともに、原料の80%を占める仕込み水に対してもこだわりをもつ。敷地内の地下水は成分的に酒造りに不向きなため、創業以来、自然豊かな周辺地域に良水を求めてきた。現在は妙高市(旧新井市)の妙高山系の天然水で酒を仕込む。くみ上げなので空気に触れないのも安心だが、これも絶対ではない。天災で水質が変わる可能性もある。「酒は自然の恩恵を受けて造っているもの。水も、いつ何があってもよいように常に良い水を探しています」と小林社長。自然に感謝しながら、地酒として守る部分と革新的な部分を併せ持った酒造りを目指す。その1滴1滴に魂を込めて、武蔵野酒造らしい酒を醸し続ける。【高橋真理子】

[2016年8月27日付 日刊スポーツ新潟版掲載]