妙高酒造/上越市
こだわりの麹室で思い出を語る平田杜氏

 「飲めて初めて酒」。平成元年に38歳の若さで妙高酒造の杜氏になった平田正行さんのモットーだ。いまはやりの香りが強いものや、後味が汚いものは嫌いだと言い切る。かといって、後味がすっきりした淡麗辛口も違うと言う。目指しているのは「後口に押し味(酸味)を感じる、気品と風格を兼ね備えたシャープな酒」。

 今季の造りで27季目を迎え、2009年(平21)に「にいがたの名工」、翌年には「全技連マイスター」に認定され、歴史ある鑑評会や市販酒対象、海外の鑑評会などでの受賞歴も県内でトップクラスだ。今回の一本は、平田杜氏自らが栽培した酒米五百万石を100%使用した「杜氏栽培米 五百万石仕込み 特別純米 妙高山」。米のコクと、酸味あるキレを感じる、まさにシャープな酒だ。

 平田杜氏の出身は上越市の頚城(くびき)地域。越後杜氏を多数輩出している杜氏の里で、平田さんの父も、妻の父も杜氏だった。酒造りの世界に入ったからには、もちろん杜氏を目指し、県内で最年少杜氏に。しかし「なればいいというものではなく、なって何ができるか」の思いで、前任者の技を踏襲せず、麹や酵母の種類から仕込み配合まで試行錯誤を繰り返し挑戦してきた。その過程で確信したこだわりの技は数々あるが、特筆すべきは1本の酒に2種類の酵母を使うことだ。

 酵母を混ぜて使うことは通常はタブーとされているが、長年の経験から酒の種類によって最高の組み合わせを見つけ出した。さらに96年には温度や水分量などを自動調節できる麹室を、蔵元に頼んで新設してもらい、酒の味を決める麹作りの作業効率が上がった。徹底した衛生管理と品温管理、さらに五感による判断で、求める酒を醸せることは「蔵元の理解と蔵人の和があってこそ」と感謝する。

 今週、1日に発表された「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」では大吟醸酒部門で最高金賞、ほか2部門でも評価を受けトリプル受賞を果たした。「物をつくっている以上は個性やこだわりがなければ、意味も、価値も、資格もない」。職人としての自負と自信は、飲み手にも確実に伝わっている。【高橋真理子】

[2016年3月5日付 日刊スポーツ新潟版掲載]