苗場酒造/津南町
「蔵の2階では酒の会なども行っています」と富沢部長

 蔵の正面に掲げられている、歴史を刻む黄色の看板が目に飛び込んでくる。苗場酒造は県内でも有数の豪雪地、津南町に1907年(明40)に創業。以来、日本百名山の苗場山の伏流水を仕込み水に、手作りの良さを生かし酒を醸し続けている。

 今回の一本「苗場山 純米吟醸」は、新潟らしいきれいな味わいの食中酒でありながら、米のうまみを感じる酒だ。蔵が大切にしているのは、「米の味をしっかり残した、昔ながらの味わいです」と富沢正実営業部長は説明する。〝昔ながら〟の言葉には、地元を大切にする、という思いが込められている。

 津南町の飲食店や旅館の人たちと一緒に酒を造り、その店でしか、その宿でしか味わえない限定酒として提供する取り組みもその表れだ。どちらも純米大吟醸酒で、飲食店限定酒は県産の越淡麗を40%まで、旅館組合限定酒は津南産の五百万石を50%まで磨いている。

 「苗場酒造」として再スタートして以来、ワインボトルを使った酒などのアイデアあふれる商品やネット販売も積極的に行っている。ショップでは前掛けや手ぬぐい、Tシャツなどのオリジナルグッズも販売し、見ているだけでも楽しい。全種類の酒も並び、その中には創業当初からの銘柄「不二正宗」もある。観光酒蔵として生まれ変わりつつも、地酒蔵として地元で愛され、地元の人とともに歩んで行きたい。「不二正宗」にはそんな思いが託されているのだろう。

 長野県境に位置し、有数の河岸段丘の地に癒やしの森、初夏はひまわりが咲き誇る台地、そして名水百選の竜ケ窪、日本の原風景秋山郷など、多彩な魅力が集まる津南町。この地を訪ねたら、富士山が描かれ、「不二正宗」の銘柄が刻まれる看板をくぐって蔵を訪ねよう。飲食店や宿で、限定酒に舌鼓を打つのも忘れずに。【高橋真理子】

[2016年5月7日付 日刊スポーツ新潟版掲載]