中川酒造/長岡市
2008年から4年間「にいがた酒の陣」実行委員長を務めた中川雅史専務

 蔵がある長岡市旧三島町では、毎年三島まつりに合わせて「全日本丸太早切選手権大会」が開催される。今年は8月16日、25回目となる。この地が刃物産地であることから始まった大会だ。刃物産業のほか、酒蔵、みそ屋、製麺店もある。共通点は良質な水が必要な産業であること。蔵の裏手にある西山連峰の伏流水が豊富な湧水となってこの地を潤す。

 蔵を訪ね、製造担当の月橋孝之さんが最初に案内してくれたのが湧き水を貯蔵するタンクだ。「上からのぞいてみてください」の言葉に階段を上る。内側が白いホーロータンクには青く透き通る水がなみなみと貯蔵されていた。まさに「神秘の水」だ。この水で「越乃白雁」は醸されている。

 中川酒造は明治21年の脇野町大火により焼失した酒蔵の酒造株を買い受け、同年創業。中川雅史専務に蔵元として大切にするものを問うと「地元に愛されることです」と断言する。その証しが普通酒「越乃白雁 黒松」のレベルの高さだ。麹(こうじ)米60%、掛米62%まで米を磨き、日々飲む酒のおいしさを追求。そのために特に麹づくりにこだわる。作業時間は麹の面(つら=表情)や香りを見て判断する。

 吉岡孝太郎杜氏は隣接する旧与板町に暮らし、自ら「越淡麗」を栽培している。この越淡麗を麹米に使っているのが、今回の一本「越乃白雁 純米吟醸」だ。昨季から新潟県醸造試験場で開発した新酵母を使い、上品な香りに磨きがかかった。口中でふくらむやさしい味わいが、地元への愛情と重なる。【高橋真理子】

[2016年7月2日付 日刊スポーツ新潟版掲載]