尾畑酒造/佐渡市
学校蔵にて。平島社長(右)と尾畑専務。試飲カウンターは芝浦工大の佐渡ゼミ生が手がけた

 古代には佐渡国の国府が置かれた史跡の里・真野に尾畑酒造はある。創業は1892年(明治25)。5代目蔵元の平島健社長は尾畑留美子専務との結婚を機に佐渡の地へ。「21年前に移住したころは新潟市内の店で佐渡の酒が置かれていることはほとんどありませんでした。5、6年前から佐渡の酒全体の評価が上がってきていますね」と手応えを語る。5蔵の共通点は、佐渡という土地に寄り添って酒を造っていること。尾畑酒造の今回の1本「真野鶴 純米吟醸 朱鷺と暮らす」はそれを象徴する。

 酒米の越淡麗は地元の相田ライスファーミングの「稲職人」、相田泰明さんと忠明さん親子が、独自に開発したカキ殻農法で栽培。加茂湖のカキ殻と有機肥料のフィルターに山の水を通すことで、山と海の両方の栄養を含んだ水になり、米が元気に育つ。「朱鷺と暮らす郷づくり認証米」でもある越淡麗と、島の2つの山脈が生む軟水、そして実直に良酒を目指す蔵人たちの手で醸されている。

 6月には、島内の90代のご夫婦が栽培するユズを使った「佐渡のゆず酒」を発売。地元産の山田錦を使った酒への挑戦など、「ここにあるもの」を生かし、次世代へつなぐ姿勢は、14年に始まった学校蔵プロジェクトに重なる。10年に廃校となった旧西三川小が酒造り、学び、環境保全、交流の場として生まれ変わった。

 造り蔵はかつての理科室。夏場に蔵人が酒を仕込み、1週間単位の仕込み体験も公募。年に1回、佐渡から島国日本の未来を考える「学校蔵の特別授業」も開催(今年は6月10日)している。酒蔵から車で20分ほど。丘の上の学校蔵を案内してくれた平島社長と尾畑専務の目の輝きは、懐かしい木造校舎の窓から望む佐渡の海に劣っていなかった。佐渡の酒物語から目が離せない。【高橋真理子】

[2017年5月27日付 日刊スポーツ新潟版掲載]