塩川酒造/新潟市
蔵見学で歴史や新たな挑戦について語る塩川和広製造部長

 新潟駅から越後線で7つ目の駅、内野で下車。駅から南へ向かい国道116号に出る直前、右手に〝川と川との立体交差〟がある。新川に架かる橋を西川が流れる。江戸時代、水害に苦しんでいた住民たちが嘆願し、3年かけて新川を開削。偉業を成しえた人たちは「願人」(がんじん)と呼ばれ親しまれていた。

 内野で大正元年に創業した塩川酒造には「願人(ねがいびと) 山廃純米吟醸原酒」という酒がある。まちを救った人たちに思いをはせた1本だ。2011年、前日に発生した東日本大震災のために「にいがた酒の陣」が中止になったとき、「イベント目的で来日していたアメリカの地酒専門店主と、たまたま会うことになりました」と塩川部長は振り返る。そのとき彼が口にしたのがこの酒だった。山廃吟醸原酒ならではの酸味のある味わいが「肉料理に合う酒質」と評価し、アメリカでの販売を提案された。その年の造りに、「願人」をベースにアメリカ輸出向けの「COWBOY YAMAHAI」を開発した。

 塩川部長が次に手がけたのが、北欧に向けて白ワインに対抗できる低アルコールの日本酒「FISHERMAN SOKUJO」。その後、2つの酒のアルコール度数を変えたタイプも販売した。しかし「最終的に何をやってもワインに勝てないのがポリフェノール。日本酒が健康にいいという具体的なネタがなかった」と悩んでいた塩川部長が出会ったのが古代米だった。「古代米の外側はポリフェノールのかたまりなんです。運命の出会いでした」。古代米を磨かず100%使った、見た目にはまるで赤ワインの「SHISUI」は、「これが日本酒なんてありえない」と蔵見学で試飲した女性を驚かせた。

 「COWBOY」から始まった塩川酒造の挑戦。その原点にあるのは土地の宝を守りつつ個性を見出していくこと。「うちは創業してまだ100年ちょっと。新参者ですよ」という塩川部長の言葉に、日本酒の可能性を信じる力を感じた。【高橋真理子】

[2015年9月18日付 日刊スポーツ新潟版掲載]