大洋酒造/村上市
2013年に就任した村山智社長は酒造環境の整備や輸出にも尽力

 春の「人形さま巡り」、夏の「村上大祭」、秋の「屏風まつり」…。町屋の風情が残り、四季折々の伝統行事が花を添える城下町村上。ここにあった14の酒蔵が終戦間際に合併し、誕生したのが大洋酒造の前身である下越銘醸だった。

 1950年(昭25)に大洋酒造に改名、代表銘柄が「大洋盛」となった。8代目にあたる村山智社長が選んだ今回の一本は「大吟醸 大洋盛」。大洋酒造では吟醸酒が一般にはほとんど出回っていなかった72年に、鑑評会出品レベルの酒を市販化。当時、ラベルと通し番号は社長の手書きだった。現在でもラベルの通し番号だけは社長が手書きし、購入者台帳は冊数を重ねている。

 吟醸酒市販化のパイオニアとしての誇りを、「大吟醸 大洋盛」が象徴している。越淡麗を40%まで磨き、華やかでありながら前面に出過ぎない香りと、うま味のバランスがとれた大吟醸酒。原料米の越淡麗は地元産で、「新潟の名工」である田沢勝杜氏(とうじ)自らも栽培。この越淡麗の栽培においても大洋酒造はパイオニア的存在だ。命名前から試験栽培し、2007年(平19)には関東信越国税局酒類鑑評会でオール越淡麗の大吟醸酒として史上初の新潟県総代(1位)に輝いた。

 村山社長が考える蔵の3本柱は、地元限定販売の「紫雲」を軸とした地元市場の充実、新たな層に受け入れられる流行をとらえた新商品の開発、そして09年からアメリカの企画会社とともに立ち上げた「Hiro(ヒロ)」ブランドを中心とした海外展開。この3本柱を確固たるものにするには酒質の向上が不可欠だ。そのため約3年前から設備の最新化と改修に取りかかり、より洗練された酒造りを可能とする環境を整えた。

 今季搾った酒を利き酒した村山社長は、「ひとクラス上の酒質になっている手応えを感じました」とほほ笑む。秋には既存商品のラベルをリニューアルする予定だ。新たなラベルを身にまとった「大洋盛」の味わいに期待したい。【高橋真理子】

[2016年5月21日付 日刊スポーツ新潟版掲載]