よしかわ杜氏の郷/上越市
「地酒のほかにジェラートなど吉川区の特産品も充実しています」と美濃川さん

 「よしかわ杜氏の郷」は、旧吉川町(上越市吉川区)の第3セクターとして、1999年に創業、翌00年に開業した県内で最も新しい酒蔵だ。酒蔵としては新しいが、この地で酒造りが行われてきた歴史は古く、1691年(元禄4)にさかのぼる。江戸時代から新潟の酒造りを支えてきた酒男(さかおとこ)集団「越後杜氏」の3大出身地の1つ、「頚城(くびき)杜氏」を多数輩出してきた町だ。

 吉川高には1957年から約50年間、全国的にも珍しい醸造科があったことでも知られる(08年に閉校)。さらにこの地は、ふもとにブナ原生林が広がる尾上岳(おがみだけ)からの湧水に恵まれ、古くから米作りに適した土地であり、57年に新潟県生まれの酒米「五百万石」が誕生したとき、新潟県酒造組合から第1号産地指定を受けた。

 杜氏の郷であり、新潟の酒造りの郷でもあるこの酒蔵の今回の1本は「有りがたし」。地元で栽培する山田錦を1割しか磨かず、ほとんど玄米の状態で醸した、酒のルーツを感じる純米酒だ。山田錦は、肥料をほとんど使わず米本来の力を引き出す「永田農法」で栽培するため、酒の雑味の原因となるタンパク質や脂質が少なく、それが後味のすっきりとしたきれいな味わいにつながっている。

 仕込み水は尾上岳の湧水を、約45分かけてタンクローリーで運ぶ。「個性的でコアなファンが多い酒ですが、世の中にはこういう酒もあることを知ってもらいたいですね」と営業企画課長の美濃川克良さん。現在も吉川区内には、吉川出身の杜氏たちの記念碑が多数残っている。それらの石碑をめぐりながら、新潟の酒造りの歴史物語をたどってみたい。【高橋真理子】

[2017年5月6日付 日刊スポーツ新潟版掲載]