代々菊醸造/上越市
「越後・謙信SAKEまつり」での代々菊醸造「チーム吟田川」。左が中澤房尚社長

 「吟田川」と書いて「ちびたがわ」。音の響きだけで、愛着がわいてくる。霊峰米山を借景とする田園が広がる地に江戸時代から続く蔵元・代々菊醸造の代表銘柄だ。

 代表銘柄といっても、誕生したのは20年ほど前。「平成6年と7年は小雪で水不足が続き、雨も降らず、地下水が枯れてしまいました。仕込み水を探してたどり着いたのが吟田川地区の水でした」と中澤房尚社長は振り返る。

 修験者がこの地の水に打たれて修行していたというほど豊かな水源地。以来、蔵から10キロほど離れた吟田川地区の水を仕込みに使い、地区の名を銘柄とした。

 「うちの酒は淡麗旨口。飲み心地のいい、悪酔いしない酒なんです。多分水のせいだと思いますよ」。超軟水、独自の酵母と仕込み方法で、大手とは違う、小さな蔵だからこそできる個性的な味わいを追求している。

 「吟田川」の無ろ過吟醸を水源地脇で3カ月間雪中貯蔵した「雪洞」が、今回の「この1本」。3月ころの雪深い時期にビンで貯蔵し、初夏に出荷する。とうがらしを雪にさらして作る「かんずり」と、夏の太陽をイメージした赤の包みが印象的だ。

 8年前の7月16日に発生した中越沖地震では1蔵が倒壊、残った蔵が火事の被害にあった。しかし出荷も酒造りも続けた。冷蔵設備がない中、ぎりぎりの状態で何とか管理をした。翌年雪中貯蔵させた「雪洞」は、「忘れることができない、極め付きの味わいでした。試練に耐えるときに酒は最高の味わいになるんですよ」。

 それはこの蔵にも通じることだろう。試練を糧に、こだわりの酒を醸し続ける。

[2015年11月21日付 日刊スポーツ新潟版掲載]