雪椿酒造/加茂市
飯塚泰一杜氏は群馬県出身。新潟清酒学校26期生だ

 毎年春に開催される全国新酒鑑評会や越後流酒造技術選手権など、清酒の鑑評会には大吟醸酒を出品する酒蔵が多い。評価に値する味わいや香りを純米大吟醸酒で表現するのが難しいからだ。しかし近年ではそれに挑戦し、評価を得ている酒蔵もある。その1つが〝北越の小京都〟と呼ばれる加茂市にある雪椿酒造だ。

 飯塚泰一さんは2011年からこの蔵の杜氏(とうじ)を務め、今年で6季目を迎える。37歳の若き杜氏だ。蔵は10年に純米酒のみを造る純米蔵宣言をしたが、出品酒用の大吟醸酒だけは造り続けていた。「金賞をもらっても負い目がありました。純米蔵だと胸を張りたかった」という飯塚さんは社長に相談。12年から純米大吟醸酒で出品することを決めた。蔵人とともに苦労を重ね、14年には全国で金賞、越後流の首席、秋の関東信越国税局の鑑評会でも入賞し結果を出した。

 今回の1本「純米大吟醸酒 月の玉響(たまゆら)」は山田錦を40%まで磨き、小さなタンクで、出品酒並みに手をかけて造る純米大吟醸原酒。「ふだん家でも高級酒を楽しんでほしい」という思いから、最高級規格で4合ビン2700円という低価格だ。昨年、麹室を改修し、発酵・貯蔵タンクも自動温度制御が可能なものに入れ替え、酒質を高めながら増産することが可能となった。「うちの蔵のレギュラー酒である純米吟醸酒の酒質をもっとクリアに、もっとふくよかにしていきたいですね」と飯塚杜氏。

 蔵の和を保つ秘訣(ひけつ)は「ぴりぴりしないこと」。やるべきことをしっかりやった上で、いい雰囲気で仕事に取り組むことがモットーだ。「蔵の全員でイメージを共有して1つの目標に向かって悩み、挑戦する。結果が思い通りにいかないからこそ、酒造りは面白い」と飯塚さん。若き杜氏が笑顔でけん引するチーム雪椿の挑戦は、これからも続く。【高橋真理子】

[2016年8月13日付 日刊スポーツ新潟版掲載]