日刊スポーツ評論家の宮本慎也氏(50)が21日のオープン戦西武-ヤクルト戦を評論。開幕3戦目の28日阪神戦(神宮)での先発起用が決まったヤクルト奥川恭伸投手(19)の投球をチェックした。

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奥川がオープン戦3度目の先発をし、4回1/3を6安打3失点。前回の登板も動画などで見ていたが、その時より左肩の開きも少しだけ改善していた。左肩が開くと、右打者の外角を狙った真っすぐがシュート回転して甘く入るが、無失点に抑えていた3回ぐらいまでは我慢できていた。ルーキーだった昨年から注目して見ていたが、初めて「成長したかな」と感じられた試合だった。

もともとスライダーの曲がりは大きかった。そのため、真っすぐがシュート回転しても、逆の方向に曲がるスライダーがあるからごまかせていた。しかし、奥川に求められる“投手像”は、本格派投手に成長すること。左右の変化でかわしていくピッチングスタイルではない。まだまだスタミナが足りず、4回以降はシュート回転してきていた。しかし序盤だけでも改善している点を考慮すれば、自分の修正ポイントは理解しているのだろう。今後に向けて明るい材料になった。

ただ開幕3戦目での起用には疑問は残る。5回1死二、三塁で左打者の森を迎えて降板。球数も77球で、森には調子の良かった第1打席でヒットを打たれている。首脳陣は、打ち込まれる前に降板させてやろうという意図があったのかもしれない。

自信をつけた時点で降板させるのは決して悪いことではない。それでも投げたイニングは4回1/3で、今試合が開幕前最後のオープン戦。プロ入り後、5回以上を投げたことがない高卒2年目の投手が、開幕ローテに入ったことはほとんどない。もちろん中継ぎとして登板させるのも反対だし、5回以上投げていない投手を開幕ローテに入れることも疑問が残る。ここまで大事すぎるぐらい慎重に育成しているなら、まずは2軍戦で7回ぐらい投げられるようになってから、1軍で先発させるべきだと思う。

これだけ特別扱いすれば、正当な競争ではなくなり不満に思う選手も出てくるのではないか。何より、奥川のためにもならない。将来のエースを目指すなら、技術に加え、精神的な部分でもみんなの手本になるような選手に育ててほしい。(日刊スポーツ評論家)