工藤ホークスのファイナル決戦の相手は楽天となった。シーズンの対戦成績は13勝12敗。勝ち越したとはいえ、互角の勝負である。「1つも負ける気持ちはない。心を1つにして戦う」。工藤監督は開幕を翌日に控えたこの日、自らを鼓舞するようにそう話した。いかに自分たちのペースで戦えるか、がカギとなるだろう。先行逃げ切りの話ではない。シーズン143試合、今季ホークスが戦ってきた「戦いのフォーム」を、短期決戦だからといって崩さないことだ。

 ホークスで臨時コーチを務めたこともある西鉄ライオンズOBの中西太氏(日刊スポーツ評論家)からファイナルを前に電話があった。「ホークスは柳田がいないのは寂しいけど『つなぎ』の選手たちがいいからね。中村晃、明石とかいるでしょ。まあ、投手もしっかりしているからね」。受話器の向こうの声は勝利を予告しているかのようでもあった。

 実戦から遠ざかって中9日。紅白戦をやり、ケース打撃で各種の攻撃法を確認した。とはいえ、ここぞの一番では「正攻法」の選択肢しかあるまい。143試合でやったこともない戦法を取るほど、策におぼれる必要もない。なぜなら、ダントツの94勝でペナントを制した「実績」がしっかりと、ある。

 何より、選手たちに浮き足だったところが見受けられないのが心強い。これも経験値なのだろう。「わしは、CS初体験じゃけん、不安でしょうがないんよ。眠れんのじゃけ」。もう何日も前から達川ヘッドコーチは苦笑いでこんな言葉を繰り返していた。ナインを信じること。「戦いのフォーム」の基本は、そこにある。【ソフトバンク担当 佐竹英治】