彼に何が起きたのだろう? 西武金子一輝内野手だ。26日現在、打率3割7分6厘はイースタン・リーグ、堂々のトップを走る。

 高卒5年目。1軍デビューはまだだ。これまでの4年間、2軍戦でもっとも打率が高かった年でさえ、15年の2割3分3厘。それが、4割近く打っている。いわゆる“確変”状態。取材は1軍戦がメイン。残念ながら、2軍戦を見る機会は限られる。西武第2球場で練習を終えた本人に聞いた。2つの変化があったという。

 「1つは、技術的なこと。考え方を変えました」。右投げ右打ち。これまでは、利き腕である右手の押し込みの意識が強すぎて、引っかける打球が多かった。今は、左手でスイングするイメージ。「左手でラインを作り、右手は添える感じです」。打球方向を意識しているわけではないが、結果、右方向への打球が増えた。「コースなりに打てているのだと思います。とにかく、体の開きを抑えてます」と手応えがある。

 もう1つの変化は、メンタル面だ。「ダメなら、今年が最後だと思ってます。去年まではキャンプから振り込んでも、体力的にきつくなってくると、次の日のことを考えて振る数を減らしてました」。それが、今年は自主トレ、キャンプと同じスイング量をこなし続けている。この日も、マシン打撃を1時間行った後、ティー打撃300球と振り込んだ。

 技術とメンタルがかみ合い、結果につながっている。支えになっているのが、先輩の言葉だ。去年から1月の自主トレをともにしている秋山から「自分と向き合う時間を増やさないといけない」と言われた。

 金子一 今までは「練習をやらなきゃいけない」という気持ちでやってました。今は、秋山さんに言われたように、自分と向き合ってるので、マシン打撃も苦ではありません。気がついたら1時間、たってます。

 入団時から見ている高木2軍野手総合兼打撃コーチは「本人の気持ちが変わったのが一番でしょう。自分の立ち位置に対し、自覚が出ている」と目を細めた。強打者ぞろいの西武。初昇格のチャンスは限られるかも知れない。それでも、金子一は「上がる、上がらないは、僕がコントロール出来ることではありません。僕が出来ることは、『誰かいるか』となった時に推薦されるよう、今の状態をキープすること。その結果、呼ばれるようにしたい」と明るく言った。強い気持ちで、デビューに備えている。【西武担当=古川真弥】