短パン、ポロシャツ姿のトレーナーが照れくさそうに手をあげる。超満員の観客が割れんばかりの拍手を送る。現地時間3月28日、ドジャースタジアムですてきな光景にホッコリした。

ドジャースの今季開幕戦は本拠地ダイヤモンドバックス戦。その試合開始直前、日本プロ野球界では見られない長い列に少し驚いた。開幕戦セレモニー。両チームの監督、コーチ、選手が1人1人名前を呼ばれ、一塁線と三塁線に並んでいく。ここまでなら日本でもよく見る光景なのだが、大リーグの場合はさらにチームスタッフも列に加わっていく。トレーナーにバットボーイに…。普段は注目を浴びない“裏方さん”が名前を呼ばれ、ぎこちなく手をあげていく様はなんともほほ笑ましかった。

ドジャースのアシスタントアスレチックトレーナー中島陽介さんに聞けば、ワールドシリーズなどポストシーズンの試合前セレモニーでも“裏方さん”は選手らと列をつくるとのこと。「本当にありがたいことですよね」と感謝していた。ジャイアンツでブルペン捕手を務める植松泰良さんも、セレモニーの話題になると「自分は紹介されなくてもいいんですけど、家族はやっぱり喜んでくれますよね」と笑顔になった。

中島さんいわく、「価値観の違いもあるんでしょうけど、こっち(米国)ではチームスタッフに対する選手のリスペクトがより強いな、とは感じますね」。大リーグ取材から帰国後、来日10年目に突入している阪神メッセンジャーに聞いてみても、「確かに米国ではスタッフもチームの中で重要な1人、という認識があるね」とうなずいていた。

メッセンジャーはチームスタッフも列に参加するセレモニーを懐かしそうに振り返り、「日本でもそうしたらいいのになって思うよ」と言葉に力を込めた。開幕戦などの節目節目で数分間“裏方さん”に晴れ舞台を用意するのは、とてつもなく「あり」だと思う。【遊軍=佐井陽介】