ファンの姿が見えないプロ野球の日々が続く。ロッテ中村奨吾内野手(27)は「いいプレーなら歓声、ミスだとため息が聞こえます。でもミスした時の『頑張れ』の声も発奮材料になりますし、プロ野球はやっぱりファンの方々の存在があってのものだなと感じています」と無観客試合を寂しく思っていた。

何かできないか-。11日に球団広報担当者と雑談する中で、公式インスタグラムでファンからの質問を募ることにした。自身ではSNSはやっていない。「球団のSNSにもあまり登場しなかったので」としながら、立候補した。突然の交流の場に、ファンの反応は早かった。約15時間で、379件の質問と感謝の言葉が寄せられた。

全てに丁寧に目を通し、プライベートの話など15の質問に答えた。「うれしかったエピソードを教えてください」というものがあった。どうしても、ファンに伝えたいことがあった。

昨春、左目下を10針縫うケガをした。球場の大浴場で洗髪に困っていると、田中靖洋投手(32)が「おれが洗ってやるよ」と言い、傷口を避けてシャンプーをしてくれた-。そんなエピソードを明かした。

ロッカールームで、ちょうど田中と当時の思い出話をしていたという。中村奨は「あの人の優しさを知ってもらいたかったです」と添えた。この秘話には多くのファンがSNS上で「感動した」「本当にいい話」と反応。「シャンプー田中さん!」と命名する書き込みも続出した。

ファンの間で一躍時の人となった田中を直撃すると「いやいや…」と照れ笑いしながら、後輩の気持ちには「うれしかったですよ」としみじみ話した。シャンプー田中さんの件は、選手ロッカーでも話題に。1つの出来事からファン同士が、選手とファンが、そして選手同士がより“We Are”を強めた。

例年と違う環境はむしろ、プロ野球に新たな価値をもたらすかもしれない。「こういう時期だからこそ、いろいろな選手が登場すればいいなと思います」と願う中村奨に続き、藤岡裕大内野手(26)がQ&Aに挑戦。前歯のあるドラえもんを描き、ファンをざわつかせた。開幕はまだ遠いが、少しでもファンとの距離が近くなるよう野球人たちも動いている。【金子真仁】