心も技も磨いてきた。オリックス漆原大晟投手(23)は、今春に支配下選手登録を勝ち取った。

「ここからは結果の世界。もっと自分に厳しくいかないと。やっとスタートラインに立てたので、これからが勝負。気を引き締めずに戦っていくだけです」

18年育成ドラフト1位で入団。最速152キロの力ある直球に定評があり、1年目の昨季は2軍で守護神を任された。年間を通してブルペン待機し、39試合に登板して1勝0敗23セーブを記録。ウエスタン・リーグでセーブ王を獲得し、オフにはプエルトリコでのウインターリーグに参加。期待株は着実に鍛錬を積んだ。

宮崎春季キャンプでは育成選手で唯一の1軍メンバーに抜てきされた。順調にアピールを重ね、背番号は2桁の「65」をもらった。マウンドでは闘志をむき出しにするタイプだが、球場を離れれば謙虚な青年で「自分の力を信じて、1つずつやっていくだけです…」と控えめだ。「ここからが、また勝負ですからね…」。笑顔の奥には苦労した一面も見せる。「朝、めちゃくちゃ早くに起きてしまうんですよね。目覚まし時計がなくても起きてしまう。そこから『今日はどんな練習になるかな』とか考えて、準備しています」。就寝時間も早く、日付をまたいだことはほとんどない。常に野球を考えるからこその生活リズム。徹底した「準備力」が漆原の持ち味だ。

3月中旬までは主にリリーバーを任された。ただ、新型コロナウイルスの影響とチーム事情から先発に向けた調整に。プロでの先発経験はないが、与えられたチャンスで「華麗なる転身」をしてみせる。

「1イニングずつですね。ルーティンはないんです。ブルペンで何球投げるとかは。大事なのはONとOFFですね。気を張り詰めすぎても、しんどくなるので。ベンチに座ったときは『ぷはぁ』って感じで。そこから、またスイッチを入れます」

開幕日は不透明ながら、虎視眈々(たんたん)と先発ローテーション入りを狙う。「(支配下の)念願はかないました。でも、支配下(選手)になることが最終目標だったわけじゃない。1軍のマウンドで1試合でも多く、チームの勝ちに貢献したいんです」。無限の可能性を持つ23歳が、新たな野望を抱く。【オリックス担当=真柴健】