最終回は西本聖氏(62)。大きな議論を呼んでいるテーマについて3つの視点を挙げた。

西本聖氏
西本聖氏

いよいよ高校野球のシーズンが到来します。この時期になると、ワクワクする野球ファンはたくさんいるでしょう。そこで今夏の大会では導入されませんでしたが、もう1度、投手の球数制限問題について考えてみたいと思います。

とても難しい問題です。勝つ確率を上げるなら、いい投手を使いたいのは当たり前です。いい投手であれば当然、登板機会は増えて球数は多くなります。その結果、ケガのリスクも高くなります。一方で、ケガのリスクが高くなっても、勝ちたいと考える投手もいます。絶対数を比較するなら、リスク覚悟で無理をしてでも勝ちたいと考える投手の方が、圧倒的に多いのではないでしょうか。

私自身、どちらがいいか判断できません。しかし、投手の球数制限を導入する前に、改善するべき問題があると思います。私なりに3つの改善点を挙げます。

(1)金属バットの反発係数の制御 すでにアメリカのアマチュア野球で実践しています。州によっては木製バットを使用するそうですが、打球が飛びすぎないように金属バットの反発係数を抑えれば、それだけヒットは減ります。打たれる確率が減れば、球数も減るでしょう。

(2)ボークなどの規制緩和 すでにプロ野球界では実践されてきています。国際大会が増え、日本と諸外国のボーク規定が違いすぎるからです。皆さんも日本にきたばかりの新外国人投手がボークを取られ、不満そうな顔をする姿をみたことがあるでしょう。ボークの規定が緩い国際試合で、日本の走者がけん制球でアウトになる光景も多くあります。日本はボークの規定に厳格すぎ、国際試合で日本の審判がいると「あまりボークを厳しくしないでほしい」と言われるそうです。投手の立場で言えば、もっと自由に投げられれば、当然、球数も減るでしょう。

(3)指導者のレベル向上 この部分は、プロアマ問題とリンクします。現在ではプロ側が学生野球資格回復制度研修会をクリアすれば、高校生以上のアマチュア選手を指導していいことになっています。しかしプロとアマ双方が歩み寄ってはいますが、まだまだ溝は埋まりきっていない現状です。日本最高峰でプレーした選手が、アマチュアを自由に指導できないルールそのものがおかしいと思います。もちろんプロ出身者が全員、いい指導ができるとは限りませんが、技術向上の確率は間違いなく上がるでしょう。そうすればケガのリスクが少ないフォームを教えられる可能性も高まります。プロの世界を知っていれば、将来性のある選手の起用法も制御してくれるのではないでしょうか。

さまざま意見があるでしょうが、いつまでも魅力のある野球界を作るにはどうしたらいいか、考え続けていきたいと思います。(この項おわり)