第101回大会は履正社が星稜を下し、初優勝を飾りました。決勝で敗れた奥川恭伸投手(3年)の姿に、熱闘甲子園のキャスターの古田敦也さんは、近い将来日本を代表するエースを重ねていました。

古田敦也氏
古田敦也氏

この大会で印象に残ったのは言うまでもなく奥川投手でした。決勝ではやや疲れがあったと思います。それでも、アベレージで147~148キロを出し、それをしっかりコーナーぴったりに投げ込んでいたのは見事でした。ここ数年の間、甲子園で見た投手では、ずばぬけた力を感じました。

松坂も甲子園ですごいピッチングを見せましたが、その松坂と比べても、奥川投手の球威でのアベレージの高さ、あのスライダーのキレは相当なレベルにあるといえます。

プロ野球選手でも、150キロのストレートをコーナーに投げ分けるのは難しいんです。スピードは出るけど、ストライクがやっと、という投手はいくらでもいます。プロ野球を代表する投手に巨人菅野がいますが、彼も140キロ台後半のストレートを制球することで勝ち星を挙げています。

それを念頭に奥川投手の制球を見ると、150キロ以上のストレートを外角きっちりに投げる技術がある。技術的な部分に加えて、精神面でのコントロールもできているのが素晴らしい。初回、三塁打を打たれた直後、小深田選手への内角に150キロ以上のストレートを2球続け、一邪飛に仕留めています。1死三塁。「ここはいかなきゃ」という場面で、ギアを上げるメンタルの強さとサイン通りに内角を突ける、印象深い場面でした。

履正社対星稜 力投する星稜・奥川(撮影・清水貴仁)
履正社対星稜 力投する星稜・奥川(撮影・清水貴仁)

彼はプロに行くことになるでしょう。どの球団に行くかによりますが、ローテーションに入ることも現実味を帯びてくる能力です。まず下半身を大きくすること。いわゆる下半身で投げることができるようになると、楽に腕を振ってもスピードが出てきます。

この後、上のステージに行けば、自らの足りないものを感じるはずです。奥川投手のスライダーは一級品ですが、同じ軌道だと打者も慣れてくる。そのためにはちょっと軌道がずれたり、スピードが違うボールがあると、投球の幅が広がってきます。そうなると、小さいスライダー、緩いカーブ、落ちる球が必要になってきます。今まで以上に大きな投手となるために、いろいろなボールを学んでほしいと思います。見た感じ器用な印象です。理解力も高そうなので、教えるのは簡単でしょうね。

夢は広がります。近い将来、彼のマウンドでの姿を見る機会があると思います。【熱闘甲子園キャスター・古田敦也】