100人以上のドラフト候補を紹介してきたが、ラストは「隠し玉」。キラリと光る逸材はまだいる。

ドラフトファイル:保坂淳介
ドラフトファイル:保坂淳介

★強肩、二塁へ1秒73

ドラフト解禁を迎えたNTT東日本・保坂淳介捕手(23=中大)は「気楽に待ちます。ダメでも、もう1年頑張って来年という覚悟はできてます」と落ち着いている。大学4年時も注目する球団はあったが「自信がなかった」とプロ志望届は出さなかった。この2年間、社会人日本代表経験もある上田祐介兼任コーチに徹底的に鍛えられた。

一番の武器は、二塁送球最速1秒73の強肩だ。足の運びや捕ってからの速さを磨き、大学時より0秒2ほど速くなった。さらに、リード面を上田兼任コーチに一からたたき込まれた。内角をよく使うが「だから強気だとは思いません。打者を分析し、投手の傾向を見て、そのうえでインコースをいかないと抑えられないなら、いくのは当たり前です。むしろ、外一辺倒の方が勇気が要る」と根拠に基づくリードを学んだ。社会人捕手で、即戦力であることが必須の立ち位置。冷静に、その日を待つ。

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ドラフトファイル:小川一平
ドラフトファイル:小川一平

★最速149キロ

東海大九州キャンパスの右腕・小川一平投手(4年=横須賀工)は3年前の春、東京・渋谷のスクランブル交差点横で声を張り上げていた。「募金へのご協力、お願いします!」。

入学直後の16年4月、熊本地震で被災。南阿蘇の寮を出ると、目の前のアパートが崩落していた。「あの光景は忘れられません」。1カ月間、大学も休講になった。地元に戻っても「遊ぶ気にもなれないし、練習という感じでも」。

知人がやっている募金活動に、関東から進学した5人で参加し2日間、声を張り上げた。力士が立ち止まった。財布の中身全てを募金箱に入れて「頑張ってね」と励ましてくれた。鳥肌が立つ思いだった。

阿蘇での4年間で、自慢の速球を149キロにまで鍛え上げた。11球団から調査書が届き、ドラフト指名が有力視される段階になっても、渋谷での2日間は忘れない。「誰にでも優しくできる人がかっこいい。そうなりたい」と己を磨く毎日だ。(つづく)【古川真弥、金子真仁】