阿部慎之助はフォトジェニックな被写体だった。「インスタ映え」という言葉が生まれるずっと前から撮り続けてきた写真映像部員が、ベストショットを紹介する。
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大記録、優勝、国際大会に大ケガまで。多くの場面を撮影させてもらいましたが、キャンプや練習中の何げない1コマ1コマが忘れられません。
捕手ならではの視野の広さか、近くでも遠くでも撮影していると、急に振り向いたり、変なポーズや面白い表情を向けてくれる。チーム内で移籍組や新外国人助っ人にスッと声をかけ絡みにいくのと同様、カメラマンにも目配り心配りをしてくれる繊細さが、豪快なイメージの阿部選手を、さらに「撮りたくなる」選手にしていたと思います。
写真は一昨年、2000安打を達成した翌朝の東京への移動時。撮影者がいると知り、広島駅のエスカレーターで日刊スポーツ紙面を手に持って、上がってきてくれた1枚です。察してくれた心配りに頭が下がりました。これからも楽しみに応援しています。【浅見桂子】
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18年9月21日のヤクルト-巨人戦は天候が悪く、室内練習場で試合前練習が行われた。
バスの到着とともにカメラを構えると阿部選手が登場。じっとレンズを見つめながら室内に入る。ちゃめっ気たっぷりの笑顔で「ベースボールカード風にお願いします」と雨天中止を想定したかのようにポーズを決めながら笑顔。雨天用の撮影が終了した。ヒーローインタビューでもそうだが、阿部選手は必ずカメラマンのレンズを1つ1つ見る。目線のある写真が必要なことを知っているからだ。
午後5時半に雨がひどくなり、グラウンドにシートがかぶせられた。今度は傘を持ってベンチに登場。審判団や関係者に「雨ひどすぎますよ」とアピール…実ったわけではないだろうが、雨天中止となった。
観客やカメラマンを癒やす、この笑顔。2軍監督になっても続けて欲しい。よろしく願いします。(この項おわり)【たえ見朱実】