「足」は「頭」で変わる。奈良原2軍監督は「走塁=意識&準備」と定義する。

4日、選手に指示を出す楽天奈良原2軍監督
4日、選手に指示を出す楽天奈良原2軍監督

「足が速くて盗塁ができることは武器。だけどそれだけじゃない。足が遅くても、その状況において何が優先的なのかを考えて、打者、チームに貢献できるかが大事」。ともに昨秋就任した三木監督は「1点を奪い、守りきる野球」を掲げる。機動力をフル活用する三木野球の実行へ、ファームの下支えが欠かせない。

小柄ながら猛者たちを相手に16年間プレー。生き残る術(すべ)は常勝軍団で培った。青学大から森監督率いる西武へ90年ドラフト2位で入団。当時、5年で4度のリーグ制覇を果たしていた環境に身を置き、衝撃を受けた。代走で出れば3球目以内に盗塁を決め、適時打で生還。バントは初球で決める。結果だけでなく、内容も当たり前のように要求された。「できなきゃベンチに帰っても『ナイス盗塁』『ナイスバント』とも言われない。レベルが高すぎた。打撃では勝負できない。1軍に残るなら守備と足を武器にしないといけないと思った」。

生き残る術は何か-。2軍監督として伝えるべきことがある。「自分の武器を意識して、1軍の戦力になるために自分が何をするかを基準に考えてほしい」。走攻守。必要とされるポジションは多く存在する。根底には「1軍がやりたい、やっている野球ができる選手を育てる」という考え。だからこそ「走塁」の大切さを提示し続ける。「いくら打てても、1つの走塁ができないと評価されない可能性もある。逆に足が売りの選手は、走塁ができないと『自分の武器が生かされてない』となる。最低限できないといけないこともある」。

06年に現役引退後から中日、西武でコーチを歴任。初めて「監督」の肩書を背負う。結果と育成。相反すると思われがちだが「目方、ものさしが違う」と言い切る。「2軍でも優勝争いの中でプレッシャーが出てくる。アピールしながら、状況下のベストをチョイスすることが大事。その中でできなかったことを練習、復習することが育成。どっちも大事」。二兎(にと)を追わなければ、二兎はつかめない。

指揮官にスター選手がそろった今季のイースタン・リーグ。「僕以外はね」と笑いながら、謙遜しつつ与えられた環境を好意的に捉える。「1つのエラーも、大勢の観衆の中かヤジられない環境なのかでダメージは全然違う。(巨人)阿部監督、(西武)松井監督とか、いっぱいスターがいることでお客さんも注目する。選手にとってもプラスだと思う」。華やかな世界で輝く人材を1人でも多く輩出するために、地道に種をまいていく。【桑原幹久】