<全国高校野球選手権:仙台育英5-4明秀学園日立>◇15日◇3回戦
2者連続のスクイズは決まらなかった。2点を追う仙台育英、3回の攻撃だ。1死二、三塁と攻め、投前に転がして1点。なおも続く一、三塁で仕掛けた。3球目。外角に大きく外されて秋元響内野手(3年)のバットは届かない。三塁走者が挟殺された。須江監督が振り返った。「1本目を決めたところで相手も(警戒して)くると思ったんですけど、僕が我慢できなかった。監督が悪いんで選手に責任はないです」。
まんまと1本決められ、明秀学園日立・金沢監督の警戒心は強くなっていた。「2回目は許さんぞ、と思っていた。必ず3球以内に仕掛けてくる。同点にはさせたくなかったので、こっちも仕掛けました」。2球目、3球目と続けてウエストを指示、追加点を阻止した。両軍ベンチの探り合い。1点を取るための手堅い作戦というが、簡単には決まらない。
スクイズを決めながら、その得点が取り消された珍事もあった。74回大会(1992年)の東海大甲府-天理戦だ。1点を追う東海大甲府は2回1死満塁の場面でスクイズを仕掛けた。打球は三塁前に転がり、三塁走者が生還した。その直後だった。桂等球審が三塁に向かって「アウト」を宣告した。
バントをした打者の長嶺和樹選手がホームベースを踏んでおり「反則打球」と判定された。「バントは練習してきたんですが、夢中だったのでなにがなんだか分かりません」。長嶺が困惑した表情で話した。望月保雄監督は「あれで流れも雰囲気も変わってしまいました」と悔やんだ。試合は4-7で敗れた。
金沢監督は6回1死満塁でスクイズを決めた。お返しの4点目だった。これで2点差。それでも逃げ切れなかった。投手と右翼手を交互に起用した投手リレーが7回に崩れた。連続の押し出し四球、さらに犠飛で勝ち越された。「打つべき手はすべて打って負けたので悔しいが、選手たちはよくやった」。金沢監督が話した。
須江監督は序盤で仕掛けた成功1、失敗1のスクイズが逆転勝ちにつながったと説明した。「ランナー三塁で、向こうが必要以上に警戒してくれ、カウントが整って、タイムリーや犠飛が出るというつながりが出てくる。いろんなところに波及していくんです」。
そういえば、2回戦の鳥取商戦でもスクイズを1つ決めていた。10-0の大勝だった。【米谷輝昭】