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WBCのアメリカ本気じゃない説に思う/里崎コラム

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 元ロッテの里崎智也氏(野球評論家)の「ウェブ特別評論」を掲載中。34回目は「WBCアメリカ本気じゃない説に思う」です。

WBC2次リーグ米国対日本 8回表日本1死満塁、左犠飛で三走のが生還し勝ち越したのを、相手の抗議で撤回され、ボブ・デービッドソン球審に抗議する王貞治監督(写真は2006年3月12日)
WBC2次リーグ米国対日本 8回表日本1死満塁、左犠飛で三走のが生還し勝ち越したのを、相手の抗議で撤回され、ボブ・デービッドソン球審に抗議する王貞治監督(写真は2006年3月12日)

    ◇   ◇   ◇

 WBCの1次ラウンドがまもなく開幕する。2006年の第1回大会で侍ジャパンが世界一になった後“アメリカは本気じゃなかった説”を耳にした。私を含め日の丸をつけて必死に戦った選手は、その話を聞いてどう思ったか。悔しかったのは私だけじゃないだろう。

 同大会で指揮を執った王監督は「選手の辞退はどこの国でもある。最終的に選ばれたメンバーが日本代表だ」と選手を鼓舞してくれた。もちろん今回の日本ハム大谷のようにけがで参加を見送るケースもあるが、出場できない選手のことを言及するのはナンセンス。グラウンドで日の丸を背負って一生懸命プレーする選手に失礼だと思う。

 野球の本場アメリカで星条旗に忠誠を誓った選手が勝負事で本気じゃないことがあるだろうか。先日、第1回WBC2次ラウンドの日米決戦で“世紀の誤審”を演じたボブ・デービッドソン審判員が引退した。当時三塁コーチを務めた西武辻発彦監督が同氏の引退に「死ぬまで忘れない」と発言したが、あの光景は当時の代表は誰しも忘れないだろう。ベンチでガッツポーズをしていた米国監督、勝利したベンチの盛り上がりはハンパなかった。「本気」で勝負した選手の歓喜としか思えなかった。

 プエルトリコなどはオリンピック、WBCなど国外に向けて国をアピールできるイベントはそう多くないので力を入れているという話を関係者から聞いたことがある。アメリカの本気じゃない説は、決勝ラウンドを米国内で開催しているにもかかわらず、世界一になっていないから人気が出ない。プエルトリコのようにWBCで国の威信を懸けてくる国も存在する。野球の本場アメリカが本気でなければ、参加国に失礼だろう。

 米メジャーでは、スプリングキャンプに当たる3月にWBCが開催されるため、選手の体ができていないとか、選手にとっては、あまりお金にならないと言われる大会で、けがをしてはシーズンを棒に振るとか、いろんな事情が渦巻く。

 基本は4年に1度の大会で、開催時期は事前に知らされている。不本意なけがは除き、大会に向けて体を仕上げることができない選手はプロではない。成り立ちを振り返ると、開催時期はMLB機構と同選手会で決めたと思う。日本の選手会は最初、開催時期に反対していたほどだった。日本は参戦すると決まった後、選手がきっちり大会に合わせていった。


 06年に出場した米国代表の選考基準となった前年成績を見ると「本気」だったことが分かる。M・ヤング、ジーターで1、2番。ケングリフィーJr.、Aロッド、チッパー・ジョーンズ、デレク・リーの3~6番(4人)で150発、投手陣もクレメンス、ピービ、22勝のウィリスと投打に隙のない「ドリームチーム」だった。しかし結果は残念ながら2次ラウンド敗退だった。アメリカが本気じゃない説は負け惜しみだったのだろう。

 WBCは4回目だがアメリカは09年の4強が最高位。米メディアも決勝まで残らないのだから積極的に報道しようとするはずがない。米国民も強くないアメリカを見たいはずもなく、大会が浸透するはずもない。

 野球と球技が異なるサッカーW杯を見ると、第1回(1930年)ウルグアイ大会は13カ国で始まった。84年後の2014年ブラジル大会には本戦こそ32カ国だが、予選参加国は200カ国を超えた。大会が根付くまでには時間がかかるのだ。

 WBCも第1回大会の参加は本戦出場の16カ国だったが、現在は予選を含めるとパキスタンなど32カ国が参加し底辺は徐々に広がりつつある。第1回(2006年)から11年で参加国が倍増している事実は評価できると思う。

 五輪では、野球・ソフトがロンドン(2012年)リオ(2016年)で競技種目から外されたが、参加国が増え、世界の普及が進めば五輪種目で除外されることもなくなるだろう。サッカーが五輪種目から外れることなど今では誰も想像がつかないのだから。

 WBCはまだ4回目で改善の余地はあるだろう。今大会前にはWBCが今回で最後とか、継続だとかニュースが飛びかったが、野球マーケットの拡大(グローバル化)も開催意義の一つだったはずだ。目先の収益を追うのも結構だが、マーケットを拡大させるには野球の世界普及は不可欠。野球を世界伝播させる強力なコンテンツと捉え、もう少し長い目で育てていってもいいのではないだろうか。普及が進めば、日本の野球ファン、競技人口の減少傾向にも歯止めがかかるだろう。また、4年に1度の「日の丸」は野球選手の1つの目標となる。

 何より日本の「野球」がメジャーの「ベースボール」より強いということを証明できる晴れ舞台なのだ。ちょっぴり強気で言わせてもらえば「アメリカには本気を出して1度でも優勝してみろ」と言いたい。

 ◆里崎智也(さとざき・ともや)1976年(昭51)5月20日、徳島県生まれ。鳴門工(現鳴門渦潮)-帝京大を経て98年にロッテを逆指名しドラフト2位で入団。06年第1回WBCでは優勝した王ジャパンの正捕手として活躍。08年北京五輪出場。06、07年ベストナインとゴールデングラブ賞。オールスター出場7度。05、09年盗塁阻止率リーグ1位。2014年のシーズン限りで引退。実働15年で通算1089試合、3476打数890安打(打率2割5分6厘)、108本塁打、458打点。現役時代は175センチ、94キロ。右投げ右打ち。

(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「サトのガチ話」)

元ロッテの里崎智也氏(40=野球評論家)の特別評論「サトのガチ話」を好評掲載中。強肩でならした現役さながら、本音トークでビシビシ刺ししちゃうかも?

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