イチロー(左)は新井宏昌打撃コーチと話す(2006年2月12日撮影)
イチロー(左)は新井宏昌打撃コーチと話す(2006年2月12日撮影)

ついに丸佳浩選手が広島からFA宣言しました。これまでの球団の基本方針として、FA宣言した選手とは交渉しない広島。しかし今回はそうではないということが明らかになっており、残留か移籍か、注目されるところです。

さて、もしも「丸移籍」となれば、ここで先に書いておきたい話があります。広島で3年前まで丸に打撃を教えていた新井宏昌氏の“あるアイデア”についてです。

新井氏といえば、ご存じの通り、南海、近鉄で名手として活躍、名球会入りも果たしている人物。指導者としては広島で丸を教える以前に20年以上前のオリックス打撃コーチ時代にあのイチローを指導した人ということは言うまでもありません。

このオフ、ソフトバンクへ打撃コーチとして復帰するということが決まったようで、さすがに力のある人物は年齢を重ねても声が掛かるな、と納得しています。

さて新井氏が広島を退団した16年オフ、神戸でじっくり話をする機会がありました。そのときに新井氏が言っていたことをこのタイミングで思い出しました。

「丸の背番号なんだけど。ゼロにすればいいのに、と思ってるんですよね。ゼロ、0はつまり“まる”でしょ。背番号と名前が同じという選手はなかなかいない。結構、面白いと思うんですけどね」

07年の高校生ドラフトで広島入りした丸、最初の背番号は「63」でした。中心選手になってきた14年から緒方孝市監督が背負っていた栄光の「9」をつけ、今に至っています。

新井氏といえば「イチロー命名」にも深く関わっている人物です。仰木彬監督が就任した93年オフのタイミングでオリックスに打撃コーチとして就任した新井氏はイチロー、当時の鈴木一朗選手を見て、その潜在能力に舌を巻いたといいます。

「こんな選手がいたのか」。そう思い、仰木監督と相談し、94年からは1軍で使うことを決めたのですが、そこでこんな話をしたそうです。

「日本中に多い『鈴木』という名前では彼のすごさが目立たないのでは。ここは名前で登録してはどうでしょう」

仰木監督も、この考えにすぐに同調。しかもイチロー1人だけでは抵抗があるだろうと策を練りました。

イチロー以前にパンチパーマで有名だった人気者の佐藤和弘を「パンチ」という登録名にすることを決定。仰木-新井のコンビによる周到な根回しで「世界のイチロー」を誕生させることになった有名な話です。

「イチローもそうだったけど野球を好きな人以外にも名前や背番号を覚えてもらうのが一流選手だと思う。そういう意味で丸の背番号0は面白いと思っています」

クールな外見に似合わない新井氏のユニークなアイデアが日の目を見ることはあるのでしょうか…。

FA宣言することになり記者の質問に答える広島・丸佳浩(2018年11月7日撮影)
FA宣言することになり記者の質問に答える広島・丸佳浩(2018年11月7日撮影)