昨年の第91回選抜高校野球大会の準優勝校、習志野(千葉)が6日、千葉・習志野市内の同校でセンバツ準優勝旗の返還式を行った。

   ◇   ◇   ◇

小林監督は、準優勝旗返還式の前、選手たちを集め、こう話した。

「普通に野球ができていたことへの感謝を感じる機会にしなければ。こういう時期だからこそ、自発的、自主的に。いいきっかけにしなくてはいけないね」

チームはこの日、活動休止の延長を告げられた。主将の角田は「個人で練習するしかない。自宅でやれることは限られている。スイングや走り込み。体力が落ちないようにやっています」と前を向いた。

同監督はかねて、野球を通して精神的成長を促してきた。例えば昨春の準優勝したセンバツ前。角田の野球ノートに「32分の32」と書いた。出場校の遊撃手の中で一番下、という意味だった。角田は中学時代、佐倉リトルシニア(千葉)の主力として活躍。習志野では1年夏からベンチ入りするなど、守備には定評があったが、さらなる飛躍を求めた。「あの子はもっとうまくなりたいと思っている。そこを刺激したいんですよね」。小林監督ならではのやり方だった。角田は当時を振り返り「少し悔しかったけど、それならセンバツでいいプレーをして二度とそう言われないようにしようと思いました」。毎日、基礎練習を繰り返した。「正面から入り、右下から打球を見る」練習では何度も打球を口にあて、変色した前歯が勲章となった。

好プレーのたびに先輩たちに頭をなでられ、笑顔で甲子園を駆け回っていた昨春。そんな角田が、新チームの主将に立候補した。この日、準優勝旗を握りしめ、堂々と返還した姿は、1年前よりも強く、たくましく映った。

小林監督は「与えられた状況は、子供たちにとっては決していい状況ではありません。でも、何か自分にプラスにするきっかけにする。そんな機会にして欲しいと思います」と言った。夏の県大会が予定通り行われれば、3年生にとって残された期間は約3カ月。成長の月日にするかどうかは、選手の「気持ち」ひとつなのかもしれない。果たしてどんな努力をして、夏を迎えるのか。逆境をバネに、もっともっと強くなる。角田の姿を見て、そう信じたくなった。【保坂淑子】

19年3月24日、日章学園戦で打球を好捕する習志野・角田
19年3月24日、日章学園戦で打球を好捕する習志野・角田