7日の大阪大会5回戦で大阪桐蔭が上宮太子を9-4で下した。準々決勝に駒を進めるなか、プロ志望届を提出予定の西野力矢内野手(3年)が復調気配の猛打賞をマークした。

初回無死一、二塁から先制の左前適時打を放つと、4回に中前打、7回には左二塁打。4回戦の浪速戦は2打数無安打とふるわなかったが「3本出て、そこが良かった。間が良くなった。最後の二塁打は自分でも振り切れたと思いました」とホッとした様子だった。

180センチ、95キロ。和歌山・紀の川市出身の男は、どっしりとした構えで右打席に立つ。そんな西野も新型コロナウイルスの影響で出場権を得ていたセンバツ、夏の甲子園が中止になると落ち込んだ。クラスではラグビー部の友人に「俺らが(冬に)花園に行くから!」と励まされ、今大会や1試合限定の甲子園交流試合開催が決まると「頑張れよ!」と背中を押された。

教室では隣がラグビー部のプロップ松井亜星(3年)。こちらも174センチ、110キロの巨体を生かし、19年度の全国高校大会(花園)では、2年生ながら定位置をつかんで8強入り。18年度に花園を制した楕円(だえん)球を追う仲間とは、部の枠を超えて常に刺激を与え合ってきた。

今夏の大阪大会は準決勝が最終戦。この日に組み合わせが発表され、10日の準決勝では昨夏の甲子園を制した履正社とぶつかる可能性が生まれた。甲子園交流試合(17日、東海大相模戦)を含めて、残されたのは最大3試合。西野は覚悟を決めた表情で言い切った。

「相手は意識していません。どこが相手でも意識しない。全員で『最後、勝ちきって終わろう』と言っています」

「優勝」という勲章がない夏。それでも必ず、笑って終わる。【松本航】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)