甲子園の交流試合が、15日から後半戦を迎える。

勝っても負けても1試合で終わり。花咲徳栄は甲子園のあとに埼玉の代替大会を戦うなど、普段とは真逆の夏になった。球児たちはどんな気持ちで甲子園に臨むのだろうと思っていたが、鳥取城北の阪上陸投手(3年)や中京大中京(愛知)の高橋宏斗投手(3年)の涙にハッとさせられた。

阪上は明徳義塾(高知)にサヨナラ負けして涙にくれ、高橋は智弁学園(奈良)との延長タイブレークを制し、高校最後の秋夏を無敗で終えて涙を流した。感情、状況の違いはあれ、ともにチームを背負ってきた大黒柱ならではの涙だろう。無観客、音のない甲子園…と普段と違う夏でも、変わらないものがある。

「いろんなものに翻弄(ほんろう)され続けた春夏でした」。ある学校の野球部長に聞いた言葉だ。センバツ中止が決まった直後は「夏を目指そう」と生徒たちを奮い立たせた。なのに夏の選手権も中止になった。各都道府県の独自大会開催が決まったあとは「独自大会で優勝しよう!」と新たな目標を持たせた。だが度重なる雨天延期で、NO・1を決められないまま、終わりを迎える独自大会もあった。

指導者のけん引力も試された春夏だった。

それでも各自が知恵を絞り、球史を断ち切ることなく、2020年の盛夏を駆け抜けようとしている。球児が涙を流せる場所があってよかったと思う。【堀まどか】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)