「あそこで本塁打はあかん。本塁打だけは避けるリードをせんと」。もしも元監督の野村克也が指揮を執っていたらそんな話をしたのでは。20年前の野村阪神時代を思い出し、想像した。グラシアルに浴びた決勝弾は痛かった。追い込んでからのカットボール。もっとゾーンやコースを外していても…などと書くのは結果論に思うのでやめる。

交流戦3カードを終え、これで4勝4敗1分け。強い日本ハム、ソフトバンクと戦っての結果なのでまずまず。交流戦そのものを5割で終えることができればいいと見ているし、間違いなく健闘している。

ムードは悪くないし、それぞれの選手も頑張っている。前日も書いたようにいまの阪神はいい感じだ。だけど気になっている点もある。その1つが「外野手の控え」についてだ。

この試合、開始時にベンチに本職を外野にする控え選手は不在だった。近本光司、福留孝介、高山俊をスタメン起用。さらに糸井嘉男を指名打者で使った。その結果、ベンチで外野を守れるのは荒木郁也だけだった。荒木の本職は内野だ。

延長12回引き分けに終わった11日のソフトバンク1回戦。最後の打球は途中から左翼を守っていた荒木のグラブに収まった。捕り方がちょっとだけあやしく見えた。荒木自身は「まあ、ちょっと」とハッキリ言わなかったがどうやら照明がかぶっていたようだ。

それでなくとも阪神の外野レギュラーには福留、糸井とベテランがいる。試合展開次第では守備固めを送りたいところだし、実際にこれまで送ってきた。しかし高山のスタメンが増え、今はそれがむずかしい状況になっている。

今月に入って中谷将大、江越大賀と「右の代打兼外野守備固め」のできる選手が2人とも2軍落ちしていることが直接の原因だ。そのタイプの選手が現状、1軍にいない。

「そこはあまり考えていませんけどね。そのための危機管理ということで荒木を外野で起用するということもしてきましたし」。外野守備走塁コーチの筒井壮はそう話した。

それでも点差をつけて福留をベンチに下げ、中谷や江越を使うというのは現状のメンバーを前提に考えれば、勝利と育成をともに追い掛ける1つの理想型ではないか、と思う。交流戦の折り返しを迎え、攻守により高いレベルでの戦いを期待したい。(敬称略)