4回表広島1死一塁、打者アドゥワを迎え降板となる青柳(中央)(撮影・清水貴仁)
4回表広島1死一塁、打者アドゥワを迎え降板となる青柳(中央)(撮影・清水貴仁)

不調とはいえ粘り強い広島に打ち勝っての5割復帰で阪神は2位浮上だ。いい部分が目につく中で指揮官・矢野燿大が厳しい決断を見せた試合でもあった。青柳晃洋の早い降板だ。

3-3の4回、1死から8番田中広輔に中前打を許した瞬間、矢野はベンチを出て交代を告げた。4回途中、66球はいかにも早い。しかも次は投手だ。しかし矢野に迷いはなかった。

「もちろん。だから代えた。カベは何度も来るけれど本人が乗り越えていかないと」。限界と見たから代えたのか? という虎番記者の質問に矢野は語気を強めて言い切った。

開幕から先発スタッフを任されている青柳。右打者には強いが左打者には打たれる課題がある。この日、広島打線は菊池涼介を下げてまで左を並べてきた。鈴木誠也の2安打を別にして序盤で左打者に5安打を食らえば指揮官が我慢できなかったのも無理はない。

矢野の決断は間違っていない。選手を責めないスタイルを貫いているが、ときには厳しさを見せるのは必要だ。だけど個人的にちょっと物足りなかったのは青柳の反応だった。

降板させられ、ベンチに戻る際の表情がテレビ画面に映っていたが明らかに不服そうだった。一般にいまの野球は「6回3失点」なら合格点とされる。ここから締め直していこうか。そう思っていた矢先の降板と言われたら、そうなるのも無理もない。

「あのままじゃね。(左は)ずっと課題ですから。青柳の気持ちも分かりますけど。試合が大事なんでね」。投手コーチの福原忍は苦しそうに話した。

矢野の判断は正しい。同時に青柳がムッとするのも普通と言えば普通だ。個人的には、それならもっと悔しそうなアクションを見せてもよかったと思う。「自分が情けないぜ」という様子を見せた方がスッキリするだろう。

大リーグでは降板した投手がグラブをベンチにたたきつけたりする。あえて、そうする。それがないと「あいつは気合が足りない」と思われるらしい。米国と日本は違うが、そういう様子も見てみたい。

「監督は怒ってはなかったですけど。次の登板のためにもよかったんじゃないですか。もうこういう思いはしないぞ、というね」。ヘッドコーチの清水雅治はそんな話をした。悔しければ結果で見返すのがプロなのは言うまでもない。(敬称略)

4回表広島1死一塁、打者アドゥワを迎えたところで降板する阪神先発の青柳(左)とベンチで電話する矢野監督(撮影・加藤哉)
4回表広島1死一塁、打者アドゥワを迎えたところで降板する阪神先発の青柳(左)とベンチで電話する矢野監督(撮影・加藤哉)