この日は「虎フェス♪」イベントだった。来場者には特製ハットが配られ「まるで野外フェスな甲子園を楽しもう!」というキャッチフレーズの下、開催された。野外フェスって何? という方のために言えば、要するに屋外でのコンサートというところか。

ゲストでミュージシャンの石井竜也が来場。試合前にヒット曲「君がいるだけで」、5回終了時にはこれも有名な「浪漫飛行」を披露した。なにせ5回は近本光司の逆転3ランが飛び出した直後。甲子園を埋めた4万6730観衆もノリノリだ。本当にフェスのようなムードになってイベントは大成功だった。

選手が打席に入るときなどの登場曲も90年代の有名なものばかりを使用した。普段は一部の若者しか知らないようなダンス音楽で出てくる選手も多いので、ここもおっさん記者としては、結構、楽しめた。

そんな中で「おや?」と思わせたのが北條史也だった。ヤクルト先発は右腕サブマリンの山中浩史。遊撃は木浪聖也かと思われたが前日、サヨナラ勝利のきっかけとなった代打二塁打を放ったこともあり、北條が8番遊撃でスタメン。その第1打席、なんと「だんご3兄弟」のテーマに乗って出てきたのだ。

「だんご3兄弟」。NHK教育テレビ(当時)の「おかあさんといっしょ」で99年に発表された曲だ。私事で恐縮だがわが家でも当時5歳の長女、2歳の次女が大好きだった。歌のお兄さんは速見けんたろう、お姉さんは茂森あゆみ。

94年7月生まれ、今月に25歳になる北條も当時、幼稚園児だ。90年代のヒット曲と言えば、あの歌が真っ先に思い浮かんだらしい。

「めっちゃ、頭に残ってますから。ちょうどウチも男の3兄弟だったし。そんなんで覚えてます」

北條は3人兄弟の次男だ。兄も弟もいまは会社員だが真ん中はプロ野球選手として激闘中。現在は同年齢の木浪と遊撃手の位置を争っている。当初は差を開けられていたが、ここに来て再び、存在感を示してきた。この日も逆転につながる安打を放った。

しかし。いずれにしても現状で抜きんでたと言える選手はいない。守備では2人の2歳下である植田海もうまい。レベルの高い競争はいいがいつまでも「だんご状態」も困る。誰か1人、これは、と思える選手が出てきてほしい。明日23日は今季90試合目だ。(敬称略)

5回裏阪神2死、左前安打を放つ北條(撮影・上田博志)
5回裏阪神2死、左前安打を放つ北條(撮影・上田博志)