中日と引き分けに終わり、渋い表情で引き揚げる矢野監督(撮影・加藤哉)
中日と引き分けに終わり、渋い表情で引き揚げる矢野監督(撮影・加藤哉)

疲れる。結構、長い間、野球を取材する記者をやらせてもらっているがこんな試合は記憶にない。延長12回スコアレスドローはあるけれど両軍とも三塁も踏めないというのは記録的だ。

4位阪神と5位中日の試合は要するに決め手に欠けた。投手が頑張ったとも言えるのだが。そう言っては失礼だが「だからか~」と思ってしまったり。

試合前、敵将・与田剛にあいさつをするために一塁側ベンチに出向いた。前日は大阪から移動しての試合だったのでタイミングがなかった。12日は中日が勝ったので機嫌も良さそうである。いや、このカードは基本、気分がいいのかもしれない。なにしろ18回戦を終えた時点で中日の12勝6敗なのだから圧倒していると言っても過言ではない。

「監督、こんにちは。なんだか阪神にめちゃくちゃ強いやないですか」

「ああ。いらっしゃい」と返してくれる与田にそんな風に話し掛けてみた。与田は苦笑しながらこんな話をした。

「いや~。それにしても5割が遠いですよ。なんとか5割に戻そうとして頑張ってるんですけどね」

なるほど、と思う。以前からここでも書いているが大事なのはまず勝率5割キープ。それがこの世界の常識だ。5割でいれば、勝てば勝つだけ貯金が増える。しかし借金があれば勝っても、それが減るだけであまり変化がない。「早く5割に…」というのは率直な心境だろう。

与田は今年の開幕前、阪神戦についてこんな話をしていた。「言ってみれば星野さんと木俣さんがそれぞれ監督になって戦うみたいなものですからね」。

往年の野球ファンには懐かしい星野仙一、木俣達彦のバッテリー。与田は阪神の指揮官・矢野燿大とバッテリーを組んだ現役時代を思い出し、そう言った。その結果は今のところ、与田の勝ちになっている。

しかし2球団の戦いだけ見ていれば中日が強いように見えるが勝率は阪神の方が少しだけ上だ。逆に言えばこれだけ阪神戦で貯金をつくっていて借金生活なのは他でそれ以上に負けているということだ。言うまでもないが。

とにかくナゴヤドームで勝てない阪神。広島など上を見ている余裕はないはずだけど、こちらを含めて、ついつい様子をうかがうのが人情だが下、つまり5位中日が迫ってきた。いいかげん勝たないと。(敬称略)

8回途中無失点で大野雄大を交代させる与田剛監督(上田博志)
8回途中無失点で大野雄大を交代させる与田剛監督(上田博志)