「こんな試合して帰りがなあ…と思ったけどお客さんいないから変な感じです」。神宮球場のベンチを出た梅野隆太郎が言った。8回終了時点で負けていた阪神にとっては存在しないはずの9回裏だが練習試合のため続行した。そこでバッテリー・エラーが続出。締まらない展開になった。

ウイルス問題がなければ、この日がヤクルト相手の開幕戦だった。そこでこんな試合なら虎党で埋まった神宮球場の三塁側スタンドは黙っていない。梅野が言ったのはそういう意味だ。

何度も書くが不測の事態で開幕が延期になった。練習試合が続く。最初はひょっとして阪神は広島、中日など本拠地が近い球団と試合をするのかなと想像した。しかし当初の日程に即して行うという。少し「おカネがもったいないのでは?」と思った。

阪神が3連戦で一度、東京遠征に来ると少なく見積もっても500万円はかかる。グリーン車を使用する新幹線代、高級ホテル代、ケータリング代…。もちろんこれはリーグ6球団で、人数の上限などを決め、総経費を分担するのだが、それでもやはり多くのカネがかかるのは事実だ。

その点を数日前に球団幹部に聞くとこんな話だった。<1>一度決めた日程を組み直すのは想像以上に難しい<2>新加入の外国人など遠征先を経験していない選手に慣れさせたい…。つまり経費を掛け、遠征してまでも練習試合をする意味はあるという。

それならば選手の方も締まっていかないと。やはり9回裏のようなことは避けたい。そんな中、少しだけ「ええやん」と思ったのは北條史也の様子だ。

北條は今月11日での対ヤクルト・オープン戦(神宮)の試合前、練習中に右足首を捻挫。17日になって1軍に再合流していた。この日が8日巨人戦(甲子園)以来の実戦。途中出場で打席は7回1死一、三塁で回った1度だけだった。

木浪聖也と遊撃争いをしていることもあり、ここは打ちたいはず。しかしきわどい球を選び、四球で歩いた。打ちたかったのでは? その問いに北條は笑みを浮かべながら話した。

「久しぶりだったんで。いつも以上に冷静にいこう…と思っていたから(ボールを)選べたのかもしれませんね。お客さんもおらんし。冷静に考えられたのかも」。淡々と言ったもののこういう感じが練習試合の本質だと思う。(敬称略)

ヤクルト対阪神 7回表阪神1死一、三塁、北條は四球を選ぶ(撮影・浅見桂子)
ヤクルト対阪神 7回表阪神1死一、三塁、北條は四球を選ぶ(撮影・浅見桂子)