「そんなもん、おまえ、代打は最初に投げてくるストライクが勝負やないか! ばかたれ!」。そんな話を以前、川藤幸三から聞いた気がする。言うまでもない「浪速の春団治」、阪神OB会長だ。きょう5日が誕生日で71歳になる。コロナ禍でなかなか取材現場に行けず、顔を合わせる機会がないのだが、相変わらずお元気だと思う。

ファーストストライクが大事。そんな言葉を思い出す日になった。この試合は今季から日刊スポーツ評論家に就任した緒方孝市と連絡を取りながら観戦していた。緒方が強調したのは「阪神は1回の攻撃がよかった」という点だ。

評論記事にもあるが阪神打線は1回、広島大瀬良大地のファーストストライクを狙って先制に成功した。これで打線が波に乗り、今季にはめずらしい徹頭徹尾、優勢に試合を進めた形になった。

いい勝利だ。だけど、もちろん緩めるわけにはいかない。この試合は大瀬良の不調もあって先制に成功し、得点を重ねられた。阪神先発の岩貞祐太もよく投げたが「楽勝パターン」だったのは間違いない。

ファンも含め、勝ちに飢えている阪神の状況ではホッとするのも当然だが大事なのは5日だ。広島2回戦でどんな戦いができるか。ここが今季、ここからの流れを占うと思う。

仰木彬、野村克也、星野仙一、そして緒方孝市とこれまで取材してきた指揮官たちから感じてきたのは接戦を取ることの大事さである。弱いチーム、最終的に結果の出ないチームは大量得点差で勝って、接戦を落とす。逆に強いチームは序盤に点差がついた試合はある程度、見切って、接戦は取る。プロの世界はそういうものだと感じてきた。

先制、中押し、そしてダメ押しと効率よく得点できたこの試合の勝利は素直に喜びたい。だからこそ翌日が大事だと思う。ここで今季初の連勝をマークし、初のカード勝ち越しを決めれば現在のよくない流れが変わる可能性はある。

逆に接戦を落とすようなことがあれば、やはり、苦しい。3日の雨天中止で開幕投手・西勇輝を万全な状態で送り出す状況がつくれたのは大きいと思う。5日の試合で西に今季初勝利がつくような結果になれば雰囲気は出てくるのでは。そう感じている。そのためにやはり広島遠藤淳志のファーストストライクを打て! だ。(敬称略)