あれは3年前…といえば昭和史に残る名曲の一節だ。分からない人は年長者に聞いてください。この日のDeNA戦を見て17年10月のクライマックス・シリーズ(CS)阪神-DeNA戦を思い出した虎党は多かっただろう。

前監督・金本知憲率いる阪神はシーズン2位。3位のDeNAと甲子園でCSファーストステージを戦った。10月14日の初戦は阪神が勝ち、ファイナル進出に王手をかけた。しかし同15日の2戦目は強い降雨の中、DeNAが逆転勝利。16日は雨天中止に。17日の3戦目も阪神は敗れた。

忘れられないのが2戦目だ。5回表で終わったこの日よりも強い雨が降る中での試合だった。目立ったのがDeNAの主砲・筒香嘉智だった。4安打2打点の働きだったが試合中、内角球を避けて尻もちをつき、ユニホームはドロドロになる場面もあった。試合後、筒香は言った。

「向こうも本気。こっちも本気。遊びじゃない。感情を抑えすぎても、いきすぎでもダメ。そんな簡単なことじゃない」

真剣勝負の厳しさをそう表現した。筒香のその覚悟に、あのときの阪神は負けたと今でも思っている。

あれから3年。その筒香は大リーグに去った。下馬評でDeNAを上位に上げなかった評論家諸氏はこの点を重視していると思う。中心選手の穴を埋めるのは簡単ではないはずだ。

だが指揮官・ラミレスは大胆だ。その17年にルーキーだった佐野恵太に筒香の「4番左翼」を任せた。おまけに主将だ。それに応え、佐野も開幕から頑張っている。3割7分近い高打率を残し、勝利に貢献している。大したものだ。

首脳陣から若き4番の座を任された男は阪神にもいる。昨季の大山悠輔だ。数字はそれなりに残したのだがシーズンを通して活躍できず、その座を剥奪された。そして今季はいわば“控え”でのスタートだった。

だが大山に代わって「4番三塁」だったマルテの故障で再び、その場所に戻ってきた。そして、今、調子を上げている。ここ4試合で3本塁打は「外された男の意地」と見たい。この日、マルテはベンチにいたが4番は大山だった。

今季、4番を打つことになったプロセスこそ違うが佐野に負けるな、大山! と言いたい。今季初めて観客4945人の前で行われたこの試合を「覚悟の日」としてほしい。(敬称略) 【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)