どないしたんや? と驚くほど見どころ満載の試合だった。近本光司の俊足で先制するわ、それを見たかったという糸井嘉男の勝ち越し弾、人格と勝負強さを併せ持つ原口文仁の逆転適時打もあったし、いつも思い切りのいいスイングを望んでいる大山悠輔もライナーで本塁打。先発高橋遥人も終わってみれば6回3失点だ。こんな試合がいつもできれば十分、巨人と渡り合える、と思ってしまう。

そんな中、面白かったのは藤浪晋太郎だ。8回に登板すると阿部寿樹にこれでもかとばかり150キロ台後半のストレートを投げ続けた。結果は四球でベンチをヒヤリとさせた。それでも3アウトすべて二ゴロで切り、捕手の坂本誠志郎と何やら笑いながら引き揚げた。思わず「何がおもろかったん? 教えて」と言いたいぐらいの笑顔だった。

救援にまわって、これで3試合連続登板か。以前にも書いたが藤浪とこんな冗談を交わしたのは3年前のことだ。調子を崩す気配を見せていた藤浪に「毎日、投げたらええのでは?」とジョークを飛ばしてみた。

「そうですね。高校生のときは真夏の真っ昼間に普通に毎日、投げてましたもんね。今では考えられないけど。まあ投げられますよ」。そう言って藤浪もニヤリとした。状況はまったく違うがまさか本当に連日、投げることになるとは。

その藤浪は“緊急昇格組”である。そしてもう1人、2番の打順に入った藤浪と入れ替わる形で退いたスタメン2番だった北條史也も同じ“緊急組”として、しぶい仕事をした。1回の犠打、そして4、5回に放った2安打とすべて得点に結びつく働きだ。

思い出すのは今季、藤浪初登板となった7月23日広島戦だ。苦しむ藤浪を助けるはずが北條は痛恨の失策をしてしまった。12年のドラフト1、2位コンビ。そろっての活躍を虎党は待ちこがれているのだが、なかなか実現しない。

皮肉にも入れ替わり、同時にグラウンドに立つ形にはならなかったがそろって勝利に貢献した。本来ならエースと、そして主軸を打つ打者として働いてほしい2人だ。この日は主役ではなかったけれど笑顔でゲームセットできたのはよかった。苦しみながら、いろいろと経験し、成長してほしいと思う。そして世の中、本当にいろいろなことがあるけれど虎党にはスカッとした勝利がなにより必要なのは間違いない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対中日 4回裏阪神2死満塁、原口の2点適時打で生還した三走北條(撮影・前田充)
阪神対中日 4回裏阪神2死満塁、原口の2点適時打で生還した三走北條(撮影・前田充)