虎党、特にネット情報などにくわしいファンは「ああ、言ってしまったな」と思ったかもしれない。前日9月29日の快勝を受けたヒーローインタビューで勝ち越し本塁打を放った糸井嘉男は高らかに「明日も勝つ!」と宣言した。

威勢がいいのは結構なのだがインタビューでそう言うと翌日の試合はなぜか勝てないという、ジンクスというか迷信というか、そういうものがこの世界、そして阪神には存在する。

有名なのがかつての大スター・新庄剛志だ。伝説の「敬遠サヨナラ打」を放った99年6月12日の巨人戦後のインタビューで「明日も勝つ!」とガッツポーズをつくって言った。新庄はこのセリフが好きだったが翌13日は負けた。

やはり同じ9月10日の巨人戦。新庄は決勝本塁打を放ち、同じセリフをぶちかましたのだが翌11日の同戦から阪神は12連敗したという記録が残っている。その99年、虎番記者だったので新庄にその話をしてみたことがあった。

「なんだよ。そんなことばっかり言ってさ。新聞記者はセンスよくないよ…」。悔しそうな新庄はそんな風におかんむりだったが、思い返しても、なんだか笑ってしまう思い出だ。

勝手な見立てだが糸井はなんとなく新庄を思い出させるイメージがある。なので余計にそんなジンクスがよぎったのだがそれにしても一方的な敗戦になってしまった。

1回に若い小幡竜平が失策し、青柳晃洋の足を引っ張った。他のミスもあったのでまた守乱で敗戦-と言われがちで、それも間違いではないのかもしれないが、この日に限れば最大の敗因は中日先発の大野雄大を打てなかったことだろう。

「明日も勝つ」と宣言した前日の殊勲者・糸井は試合に出なかった。大野雄大対策だろうが糸井の代わりに右翼で起用されたのは中谷将大だ。その中谷がまったく機能しなかった。唯一の見せ場は8回の3打席目で左翼ポール際に放った大ファウルぐらいか。

相手投手への対策で起用された選手が何もできなければ使った方もガックリくる。それ以前にその起用が正解なのか、という話にもなってしまう。その逆もしかりで「起用に応えた!」とか「采配ズバリ!」となるのだが。阪神にとっていいところのない試合になった。異例のシーズンも、もう10月。こんな試合はこれで最後にしてほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)