84年以来34年ぶりの4強進出を果たした金足農(秋田)が、今日20日に行われる日大三(西東京)との準決勝で、第1回大会の秋田中(現秋田)以来となる秋田県勢103年ぶりの決勝進出に挑む。前日18日の近江(滋賀)戦で二塁走者として逆転サヨナラ2ランスクイズの立役者となった菊地彪吾(ひゅうご)外野手らチームは19日、宿舎内で休養を優先。同校過去最高成績に並んだことに満足せず、東北勢初優勝を誓った。

 菊地彪は「金足農ミラクル4強」「逆転サヨナラ2ランスクイズ」の見出しが並ぶ新聞を手に、喜びをかみしめた。「やっぱりうれしい。自分が練習してきたことが甲子園で出せて良かったなと思います」。だが、気を緩めることはない。「まだ84年の先輩に並んだだけ。てっぺんをとりたい」と闘志を燃やした。

 前夜は宿舎に戻って食事後、興奮でなかなか寝付けなかった。起床後は「ズボンから服を着て、2回うがいをする」験担ぎは継続。宿舎近くの温泉施設にチームで出向き、練習はせずに疲労回復に努めた。宿舎には祝電も多く届いた。自身にもLINEなどで祝福の言葉が送られているが、移動中のバス以外は携帯電話使用禁止のため、メッセージは未読。「応援の声は届いているし、甲子園でも皆さんが応援してくれた。疲れも大丈夫です」。

 日大三の試合映像も確認した。相手投打の特徴をホワイトボードに書いて、対策も練った。「打撃が良いので、外野の守備位置は気をつけたい。投手も140キロを超える右も左もいるので逆方向を徹底します」。横浜との3回戦で先頭打者の打球に追いつけず、三塁打を許した反省も生かす。

 チームではスクイズを決めた斎藤璃玖内野手(3年)と、モノマネなどで盛り上げ役としてコンビも組む。斎藤は志村けんが得意。中泉一豊監督(45)や選手の特徴をまねる菊地彪は中1時にマウンテンバイクで、縁石をジャンプしようと試みた際に転んで抜けた前歯をネタにするなど、野球も士気向上でも体を張る。

 大垣日大戦で決勝弾を放った大友朝陽外野手(3年)、横浜戦で逆転3ランの高橋佑輔(3年)、そして菊地彪。打者陣の日替わりヒーロー誕生が、エース吉田を援護する。中泉監督は「なぜが当日に自分と偶然にも関わった人が活躍しているんですよね…。彪吾は試合前にトイレで一緒になって、いたずらしたんです」と苦笑い。菅原天空内野手(3年)は「彪吾の好走塁がなかったら、同点で自分に回った。うれしいけれど、何だよって感じもちょっとだけある」と笑顔。吉田だけに主役を渡さない意地も「カナノウ旋風」の原動力だ。【鎌田直秀】