大船渡が11-3の8回コールドで高田を圧倒し、県大会切符を勝ち取った。大船渡のエース佐々木朗希投手(2年)が初回、自校のスピードガンで自己最速に並ぶ154キロを計測した。7回を投げ3失点したが、6者連続を含む15奪三振と好投。8回には公式戦初本塁打も放った。1年時から注目された「岩手の新怪物」が、夢の甲子園へ向け確実な1歩を踏み出した。

初回いきなり、154キロが出た。それでも、1死から三塁打を含む3連打の洗礼を受ける。そこに失策が絡み、まさかの3失点の立ち上がりだった。それでも、顔色を変えることなく2回のマウンドへ向かうと、いきなり3者連続三振。軽く右拳を握り、笑顔でベンチに戻った。「ストレートを張られていたので変化球を多めに投げた」とスライダーの配球を増やして対応。それだけで、相手は佐々木の投球に翻弄(ほんろう)された。4回以降は1度も二塁を踏ませず、7回まで毎回の15奪三振。初の4番に座り5打数3安打3打点、8回には本塁打も放ち、まさに二刀流の活躍だった。

隣県で、同じ公立校の金足農(秋田)に刺激を受けた。「金足農業さんが全国で良い試合をしていた。自分たちもセンバツに出てそういう戦いがしたい」と、甲子園への思いは一層、強くなった。新チームとなって「これまでとは違う。自分たちが最上級生になった時、周りに頼らずチームを引っ張っていきたい」と心境の変化を語った。

夏の間は「特に変わったことはしていない」と言うが着実に進化を遂げている。地道なウエートトレーニングで下半身を鍛え、制球力を上げた。この日の球数は7回を投げ94球。国保陽平監督(31)は「制球力や配球に磨きが掛かり、早いカウントでアウトを取れるようになった。球数はかなり少なくなっている」と成長を感じている。

U18日本代表の第1次候補に選ばれていたが落選。それでも自己分析し「選ばれなかったことは悔しいけれど、自分の力不足。今日も初回で打たれたように立ち上がりが弱い。そこを修正して、来年こそは選ばれたい」。岩手の新怪物、佐々木が力強く、1歩を踏み出した。【神稔典】