日本高野連は14日、第91回選抜高校野球大会(来年3月23日から12日間、甲子園)の「21世紀枠」の各地区候補9校を発表した。この中から3校が来年1月25日の選考委員会で選出される。

近畿地区からは八尾(大阪)が選ばれた。練習前に長田貴史監督(41)から伝えられたナインは一様に無反応。同監督は「(無反応は)戸惑いというか、驚きですよね。成績を残せていない中で選んでいただいたのはOBの方々が築いてきた伝統によるもの。頑張っている生徒にいいプレゼントをいただいた」と笑顔を見せた。

採用から19年目になる21世紀枠で大阪から近畿地区推薦校が出たこと自体が初めて。八尾は今夏の南大阪大会で8強に進出したのに続き、今秋の府大会でベスト16に進んだ。

1915年創部の古豪。春6度、夏4度の出場実績があり、52年夏には準優勝するなど、かつては大阪を代表する名門だった。巨人で背番号4が永久欠番になった黒沢俊夫や、内閣官房長官などを歴任した塩川正十郎、俳優の青木崇高ら多士済々のOBを輩出している府立の進学校だ。

八尾市内の校舎に隣接するグラウンドは他部と共用。校規で午後7時完全下校と決められ、下校後も塾に通う生徒が多い。外野を使えるのは週に計3時間弱。自主性を重んじる方針で、着実に力をつけてきた。ミーティングも練習メニューも選手が主導。この秋の練習試合ではサインも選手に決めさせたことがあった。

新チーム結成時に西浦謙太主将(2年)はナインを前に「本気で甲子園を目指す」と告げたという。環境の不利について「(思ったことは)1度もない。強豪の私立と同じような練習をしていても勝てない。環境が限られているからこそ基本に時間を割いたり、数をこなせる。逆にいいと思っている。その意識は全体にもある」と言い切った。

大阪桐蔭や履正社など全国的な強豪私学がひしめく大阪では、公立校の甲子園への道は険しく、95年春の市岡が最後だ。八尾は59年夏以来、60年ぶりの甲子園を「本気」で目指し、野球に勉強に精を出している。