昨秋4強の秋田が湯沢翔北と延長15回タイブレークの死闘を8-6で制し、逆転で8強入りした。一打同点の走者を置いた最終回の守りでは、佐藤頼(らい)内野手(1年)が二直を好捕。二塁送球で飛び出した走者を刺し、値千金の併殺を完成させた。また右翼から回って2番手で救援したエース左腕・高橋真央(2年)が、10回1/3を3失点(自責1)に抑える力投でリズムをつくった。

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秋田にビッグプレーが飛び出した。地区大会直前の練習で左足甲を疲労骨折し、この試合から復帰した佐藤頼が勝利をたぐり寄せた。相手の本塁悪送球で2点を勝ち越した直後の15回裏無死一、二塁。外野前に落ちるかという打球をダイビングキャッチ。すぐさま二塁に送球し、2つ目のアウトも奪った。そして最後の打者が中飛に倒れゲームセット。「捕れると思ってグラブを出していない。入ってくれという気持ちだった。着地したときに折れた部分に痛みがあったが、自分のプレーが勝利につながってうれしい」。お互いに1歩も譲らず3-3のまま、14回に3点ずつ加点して15回に突入する熱戦だった。

佐藤頼は新チーム後、通常練習と自主練習でとことん走り込んだ。「バッティングが得意ではないので、足と守備で貢献したい」という気持ちでハードトレーニングをこなした。しかし、足にダメージが蓄積し疲労骨折。医師からは全治1カ月を告げられた。県大会準決勝、決勝での復帰が現実的だったが、リハビリ、超音波、睡眠、食事、ストレッチと早期回復へできることは何でもやった。先週半ばごろから5割の力で走れるようになり、試合2日前には痛みもなくなった。「これ以上はチームに迷惑をかけたくない」とこの日朝、伊東裕監督(38)に出場志願し、けがから3週間で県大会の舞台に立った。

8回に追いついてからの逆転勝ちに伊東監督は「3点ビハインドで5回を終えて、1、2点でも返しておきたかった。タイブレークは選手みんなが落ち着いていた。(先攻で)送るか強攻策にするか頭を悩ませた」と振り返った。死闘の幕切れにふさわしい劇的勝利で、昨秋の4強超えへ好発進した。【山田愛斗】